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節電器事件


                        弁護士 岡根竜介

 兵庫や大阪に続き、京都でも4月23日、多数の節電器被害者が信販会社を相
手に集団提訴しました。消費者被害事件の一つです。
 数年前から、アイディックという会社(現在破産手続中、破産宣告はでている)
が、「コスト削減プラン提案書」等の書面を示して、「節電器」を設置すれば、
「節電効果が2〜4割もあり、すぐにでも元が取れる」などの謳い文句のもと、
中小の業者さんを中心に勧誘を繰り返していました。長期にわたる不況で少しで
も経費節減を願う業者の弱みにつけ込んだのです。
 実際その「節電器」はというと、節電効果は全くありません(白熱灯などを使
っている場合には、僅かばかり電力消費量が少なくはなるようです)。単なる変
圧器にすぎません。そればかりか、「節電器」を設置してしまうと、通常の電圧
を落として、電気器具に電力が供給されるため、場合によっては、電気器具が故
障するケースもあります。実際相談を受けたケースでは、「節電器」をつけた後
の方が前年(設置する前)よりも電気使用量(電気代)が増加していました。
 そこで、設置した店では、節電効果が現れないので、アイディックに苦情を申
し入れるのですが、アイディックは、言を左右に時間だけを引き延ばします。
 一方、多くの被害に遭われた業者さんは、信販会社との間で、クレジット契約
を結んでいます。この契約は、代金支払いのためではありますが、アイディック
との売買契約とは法的には別個の契約です。しかも、多くの被害者は、法人です
ので、割賦販売法・特定商取引法や消費者契約法による保護を受けることができ
ません。アイディックや信販会社は最初からそこにつけ込んだとも思えるのです
が、被害者は、騙されて無用の長物を設置させられた上、その代金支払いは継続
していかなければならないのです。
 アイディックの「節電器」を巡っては、2000年頃よりトラブルが目立ちはじめ、
信販会社も数件代わっています。現在の情報社会のもと、信販会社に課せられた
加盟店契約を結ぶ場合に求められる調査をきちんと尽くしていれば、後発の信販
会社としては、アイディックとの加盟店契約は結ぶべきではなかったものと判断
できます。被害を増大させずに済んだのです。
 そこで、被害者らは、アイディックを相手にしても全く無意味なので、信販会
社を相手に、将来の分割払いの義務のないことの確認や既に支払ってしまった代
金の返還を求めて、訴訟提起を行ったのです。
 現在のところ、裁判例は、被害者の契約時期により勝訴と敗訴が分かれている
ようです。