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福山弁護士の「飲み法題」


  
       

派遣先による派遣契約の一方的解約

Q 派遣期間の途中で、派遣先会社が一方的に派遣元会社に対して派遣契約の中途解約を  通告しました。派遣先会社は、私に対しても「来月から来てくれなくてよい」と言って  きました。派遣元会社も、派遣先から契約を解約された以上、来月からは給与を払えな いと言います。どうしようもないのでしょうか。 A 派遣や業務請負、パート、フリーター等の非正規労働者の急激な増大が、いわゆるワ  ーキングプアの発生等の深刻な社会問題を生みだしています。非正規労働者の多くは事  実上、無権利状態に置かれており、そのことが問題解決を妨げています。今回はその一  場面である派遣先による一方的解約の問題を取り上げてみました。   派遣先が派遣契約を中途解約しても、派遣元と派遣労働者の労働契約には影響はあり  ません。派遣元は派遣労働者に対して派遣期間満了までの労働契約上の義務を負います。  派遣労働者が派遣元会社に派遣期間満了までの給与等の請求をするための法的構成には、  以下の3つの方法があります。 @ まず第1に、労基法26条による休業手当の請求を行う方法があります。この場合、  派遣先による一方的解約が、同条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたるか否かが問  題となります。ここに「使用者の責に帰すべき事由」には、不可抗力以外の全ての場合  が含まれると解されています。従って、派遣先による一方的解約の場合もこれに該当し、  休業手当の請求は認められます。 A 第2に、民法536条2項に基づいて賃金全額の請求を行う方法があります。この場  合、派遣先による一方的解約が、同項の「債権者(使用者)の責に帰すべき事由」にあ  たるか否かが問題となります。ここに「債権者(使用者)の責に帰すべき事由」とは、  使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべき事由をいいます。上述のように、  派遣先による派遣契約の中途解約は派遣先の契約違反であり、派遣元はそれに従う義務  はありません。にもかかわらず、派遣元が派遣労働者との労働契約を解約するのは、派  遣元と派遣労働者との間の労働契約に違反します。従って、この場合、派遣元会社に故  意または過失があることは明らかであり、賃金全額の請求が認められます。 B 第3に、民法415条(債務不履行)により賃金相当額の損害賠償を請求する方法が  あります。債務不履行による損害賠償請求が認められるためには、債務者(派遣元)に  故意または過失が認められることが必要ですが、上述のように、この場合、派遣元会社  に故意または過失があることは明らかですから、賃金相当額の損害賠償請求が認められ  ます。  上記の方法のうち、@の方法では休業手当は平均賃金の60%とされているため(労基 法26条)、賃金額全額の請求はできませんが、労基署や職安による早期解決が可能です。 それに対して、ABの方法では、賃金額全額を請求できますが、拒否されたら訴えの提起 や労働審判の申立等を行うことが必要になり、迅速性の点で@に劣ります。いずれの方法 が適切かは、事案によって異なりますので、具体的には弁護士にご相談ください。    弁護士 福 山 和 人



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