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労働ビッグバンって何?
2007年1月27日から開会される通常国会に、厚生労働省が提出を予定していた日
本版ホワイトカラーエグゼンプション(自由度の高い働き方にふさわしい制度)は、結局、
提出が見送られることになった。
労基法では、労働時間について、1日8時間週40時間までを原則として、それを超え
て時間外労働をさせる場合は一定の割増賃金の支払を義務づけている。ところが、この日
本版ホワイトカラーエグゼンプションが導入されると、年収や職務等の一定の条件を充た
す場合に、この労基法の労働時間規制が適用されないことになり、いくら働いても残業代
を支払わなくてもよいことになる。もしもそのような制度が導入されたら、ただでさえサ
ービス残業が横行し、過労による労災認定が増えている下で、過労死や過労自殺の一層の
増大を招きかねない。マスコミがこの法案をこぞって「残業代ゼロ法案」、「残業代不払
い法案」、「過労死促進法案」などと手厳しく批判したのも当然であろう。その意味で、
法案提出が見送られたことは、一応、多くの労働者にとって幸いなことといえる。しかし、
これはあくまで、4月の一斉地方選挙や7月の参議院選挙を控えて与党に「サラリーマン
を敵に回したくない」との思惑が働いたためにすぎないと言われている。
財界は「労働ビッグバン」と称して、労働分野での法規制を全面的に見直そうとしてい
る。その目的について、財界は、正社員の保護を撤廃して、立場の弱い非正規労働者の地
位を向上させる等と言って、一見、増加する非正規労働者の利益を図るかのように言う。
しかし、それなら非正規労働者を減らして正社員化するとか、せめて非正規労働者の賃金
を正社員と均等にする等の法規制を行うべきであろう。しかし、彼らは決してそういうこ
とは言わない。そこで目論まれているのは、ホワイトカラーエグゼンプションの導入や解
雇規制の撤廃、派遣労働の全面解禁等、労働分野での全面的な規制緩和などである。何の
ことはない、結局、彼らが思い描いているのは、何の規制や監督も受けずに、労働者を低
賃金で長時間好き放題に使えて、要らなくなったらいつでも解雇できるというしくみであ
る。
1日12時間から14時間労働が当たり前だった1886年5月1日、アメリカの労働者は世界初
のメーデーで、「第1の8時間は仕事のために、第2の8時間は休息のために、そして残りの
8時間は、おれたちの好きなことのために」を訴えた。「労働ビッグバン」は極論すれば、
労働法を解体し、私たちの社会を1886年以前の社会に引き戻そうという企みに他ならない。
歴史の逆行を許すべきではなかろう。
弁護士 福 山 和 人
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