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その後の「幸せの黄色いハンカチ」
夕張と「幸せの黄色いハンカチ」
先日、北海道の夕張に行ってきた。夕張と言えば、財政破綻の町として全国に知られる
こととなったが、私が夕張と聞いて思い浮かべるのは山田洋次監督の名作「幸せの黄色い
ハンカチ」である。
夕張の今昔
高倉健演じる主人公が勤めていたのが北炭夕張炭鉱で、炭鉱住宅に数え切れないほどの
黄色いハンカチが風にはためくラストシーンは今も忘れられない。この映画が公開された
のは1977年、健さんと倍賞千恵子演じる夫婦が住んでいた炭鉱住宅はとてもみすぼら
しかったが、町には活気があった。30年後の今、町には人影もない。
何故、夕張の財政が破綻したか
北炭夕張炭鉱は、1981年にガス突出事故を起こし、労働者が坑内に残されていたに
もかかわらず水が入れられ、93名もの労働者が見殺しにされた。ほどなく炭鉱は閉山と
なり、町の人口は10分の1に減った。北炭は食い逃げのように町を去り、国も道も援助
を打ち切った。その結果、年間の予算規模40億円程度の夕張が360億円もの借金を背
負うことになった。
夕張住民の努力
今、夕張では、財政再建のために大幅な住民サービスの切り捨てと住民負担増が進めら
れようとしている。そのため人口の流出も進んでいる。しかし、市の援助打ち切りの下で、
若者たちが手作りで行った成人式はテレビで大きく報道された。年間のべ3万人のお年寄
りが利用する老人福祉会館に対して、市は財政支出を打ち切ったが、運営主体の社会福祉
協議会は夕張メール募金を立ち上げ、資金確保に懸命だ(詳しくはhttp://www.just.st/5
00000を参照してください)。市の計画では、全市で7つの小学校が1つに、4つの中学
校が1つに統廃合されようとしているが、先生たちも子どもの教育を守ろうと必死だ。
地方自治体の原点
いろんな人たちが、町を守ろうと必死に頑張っている。その姿に触れ、話を聞いて、私
は地方自治体というものの原点を見た気がした。いうまでもなく自治体とは住民の暮らし
を守るために存在している。その当たり前のことを、住民自身がギリギリのところで守ろ
うとしているのが夕張なのだ。夕張と言えば、多くの地方自治体が、反面教師としてしか
見ていないが、むしろどん底から這い上がるために、地方自治の原点に立ち返った夕張住
民に見習うべきではないだろうか。
弁護士 福 山 和 人
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