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幻のタンメンを求めて
以前、左京区高野に旨いタンメンを食わせるラーメン屋があった。一乗寺のラーメン街
道のはずれにあったその店は、カウンターだけの小さな店で、派手な看板もなければ愛想
のいい店員もいない疲れたような店だった。それでもラーメン激戦地の一乗寺ラーメン街
道のはずれに位置していたので、ラーメン好きの僕としては、一応フォローしとかなあか
んという半ば義務感で入ったのである。ところがその店のラーメンを食べてみて驚いた。
醤油味なのだがスープの出汁がわからないのである。「何じゃこりゃ? 変わった味や
な」というのが第一印象。言葉で表現するのはとても難しいけれど、強いて言えば、漢方
薬配合の醤油味とでも言おうか、独特の風味であった。
強烈な印象を受けた僕は、数日後、もう一度その店に行き、どうやら看板メニューらし
き「タンメン」を注文した。恥ずかしながら当時の僕は、タンメンとタンタンメンの区別
もついておらず、激辛ラーメンが出てくると思っていたので、出てきた物を見て驚いた。
透明なスープ(白湯スープ)にコシのある細麺、たっぷりと乗っかったモヤシとネギ、ま
たもや「何じゃこりゃ?」と思った私であったが、一口食べてさらに驚いた。澄み切った
スープなのに、濃厚な出汁と塩味が利いていてとにかく旨い。そして例の漢方薬っぽい独
特の風味。すっかり癖になった僕は、その後、週に2〜3回はその店に通うようになった。
ところが、仕事が忙しくてしばらく行けなかった僕が久しぶりに行ってみると、何と別
の店になっているではないか。いろいろ聞いたところ、どうやら廃業したらしいことがわ
かった。大ショックだった。その後、僕は旨いタンメンを食わせる店を探し続けているが、
未だにあの味を超えるタンメンには出会っていない。
京都はラーメン激戦地と言われ、様々なラーメン店が凌ぎをけずっているが、多くは伝
統的な醤油ラーメンか豚骨醤油で、最近は醤油と魚介のダブルスープというのも出回って
いるようである。しかし僕はあえて言う。タンメンは旨いよ。
タンメン好きの読者諸兄がおられたら、どうか旨いタンメン情報をお寄せいただきたい
と思う今日この頃である。
弁護士 福 山 和 人
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