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働かせ過ぎストップ! 教員の超過勤務に慰謝料支払命じる判決
京都市立の小中学校の先生が、恒常的な超過勤務を強いられていたことを理由として、
時間外勤務手当及び慰謝料を請求していた事件で、最近、京都地裁は京都市に対して慰
謝料の支払を命じる判決を言い渡しました(2008年4月23日判決)。
公立学校の先生は、いくら残業をしても残業代は一切もらえないことをご存じですか?
これは、公立学校の先生には、一律年4%の調整手当を支給する代わりに一切残業代
を支払わないという法律があるからです。以前、政府が国会に残業代ゼロ法案(ホワイ
トカラーエグゼンプション)というのを提案しようとして、世論の非難の前に提出を断
念したということがありました。いわば、公立学校の先生については、4%の調整手当
と引き換えに、事実上ホワイトカラーエグゼンプションが導入されているようなもので
す。その結果、多くの先生が恒常的な超過勤務や持ち帰り残業を強いられているのが実
情です。学校の先生というと、昔は夏休みや冬休み、春休みと休みが多くて、良い商売
やなと言われたものです。しかし、最近の先生たちは、総じてとても忙しく、またうつ
病などの精神疾患を患う先生も増加しています。
今回の判決は、こうした状況に一石を投じる画期的な判決といえるでしょう。とりわ
けこの判決は安全配慮義務違反を理由とする慰謝料請求を認めた点は、これまでの考え
方を大きく進める意味合いを持っています。安全配慮義務というのは、使用者は労働者
を雇用するに際しては、労働者が生命や健康を害することのないように、その安全に配
慮しなければならないという義務のことをいい、多くの過労死や過労自殺をめぐる裁判
で、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求が認められてきました。しかしそれら
はいずれも失われた命の代償として損害賠償請求が認められたものです。ところが、今
回の判決では、生命や健康に対する現実的被害が生じていない中でも、「過度な時間外
勤務がなされた場合には肉体的のみならず精神的負荷が強い」、「健康保持に問題となる
程度の少なくない時間外勤務をしていたことを踏まえると、・・・強度のストレスによ
る精神的苦痛を被った」などとして慰謝料が認められました。この判決により、安全配
慮義務は、命の代償ではなく命を守る予防の法理として発展する可能性が開かれたとい
えるでしょう。
今後、この判決をテコに、官民問わず全ての労働者の働かせ過ぎを是正させることが
大切だと思います。
弁護士 福 山 和 人