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お酒と映画@『幸せの黄色いハンカチ』編
今回もお酒にまつわる話を一つ。
ドラマや映画ではお酒が登場するシーンがたくさんあります。たとえば映画
『カサブランカ』で、ハンフリーボガード演ずるリックがイングリッド・バーグ
マン演ずるかつての恋人に「君の瞳に乾杯」と言いながらグラスを上げるシーン
は余りに有名ですよね。
ではお酒を旨そうに飲むシーンと言えば、みなさんはどの映画を思い浮かべま
すか?
私的には、山田洋次監督の『幸せの黄色いハンカチ』の中で、高倉健演じる主
人公勇作が出所後に初めてビールを飲むシーンがピカイチです。
流れ者の炭坑夫勇作が夕張のスーパーで働く光枝と結婚、光枝は子供を身ごも
ります。ようやく小さな幸せをつかんだと思ったのもつかの間、光枝は流産。ヤ
ケを起こした勇作は盛り場でチンピラと喧嘩して殺してしまいます。刑期を終え
て、網走刑務所から出所してきた勇作は、町の食堂でカツ丼とラーメン、ビール
を注文します。彼は、運ばれてきた瓶ビールをコップに注いで両手で握りしめ、
睨みつけるように見たかと思うと、やおら一気に飲み干すんですが、飲み干した
後の表情が絶品。ビールのCMによくあるようなハッピーな笑顔とは全く無縁の
無骨な表情なんですが、人がこれほどに旨そうに、それでいて悲しげに酒をあお
るシーンは見たことがありません。
はじめてこの映画を観て以来、何度も繰り返し観ては、このシーンを真似てみ
るんですが、何度やってもうまくいきません。やはり健さんはすごい!
観たことある方も、まだ観ておられない方も是非一度ご覧ください。映画の楽
しみ方が広がるかもしれませんよ。
弁護士 福 山 和 人