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福山弁護士の「飲み法題」


       

お酒と映画A『男はつらいよ〜ぼくの伯父さん』編

 今月もお酒と映画にまつわる話を一つ。  前回は、山田洋次監督の「幸せの黄色いハンカチ」のワンシーンをご紹介しまし たが、山田洋次ファンの私としては、何と言ってもはずせないのは「男はつらい よ」シリーズです。 寅さんがお酒を飲むシーンは毎回必ず出てきますが、お酒と寅さんといえば印 象に残っているのは、1989年の「男はつらいよ〜ぼくの伯父さん」で、寅次郎が満 男にお酒の飲み方を指南するシーンです。  大学受験に失敗した満男は予備校に通って合格を目指しますが、ある日、家庭 の事情で佐賀に引越した泉(後藤久美子)から手紙が届きます。以前から泉へ恋 心を抱いていた満男は勉強が手につかなくなってしまいます。そこへ寅さんが柴 又に帰ってきます。さくらから、満男の相談に乗ってやってほしいと頼まれた寅 さんは、満男を飲み屋へ連れていき、こんな風にお酒の飲み方を教えるんですね。   「いいか、片手に杯を持つ、酒の香りをかぐ、な、酒の匂いが鼻のシンにずー っと染み通った頃、おもむろにひとくち、呑む。さあ、お酒が入っていきます  よということを、五臓六腑に知らせてやる、な。そこで、ここに出ているつき  出し、これを舌の上にちょっとのせる、これで酒の味がぐーんと良くなる。そ  れからチビリチビリ、だんだん酒の酔いが身体に染み通ってゆく・・それをな  んだお前、駆けっこして来た奴がサイダーを飲むみたいに、ガーッと飲んで、  胃袋が驚くよ、それじゃ、わかったか?」  いいなあ、このシーン。でも自分はといえば、いまだにサイダーみたいな飲み 方で、まだまだ寅さんの域には達しませんが・・。  このシーンでは酒に酔った満男が恋の悩みを打ち明けます。  「不潔なんだよ。だって俺、ふと気づくとあの子の唇とか胸とか、そんなこと  ばっかり考えているんだよ。俺に女の人を愛する資格なんかないよ」   寅さんはすかさず言います。「お前は正直だな、えらい!」   長年、恋に明け暮れてきた寅さんならではの一言ですね。でもお酒が入らない となかなかこういう話にはならないもので・・。この場面ではお酒が必須アイテ ムでした。  こんなふうにお酒にまつわる映画でオススメがあれば、ぜひ教えてくださいね。 弁護士 福 山 和 人