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「地方分権改革」とは何だったのか
今回はちょっと堅めに地方自治をめぐる問題について考えてみたい。
「自民党をぶっつぶす」と叫んで首相になった小泉元首相のおかげ
で、今や本当に自民党はつぶれそうになっている。
しかし、つぶれそうになっているのは自民党だけではない。地方に
行くと、駅前の商店街ですら「シャッター通り」化していて、派手な
看板を挙げているのはサラ金ばかり。農家も後継者不足に悩み、農地
は荒れ放題。地方の病院には医師も来ず、出産すらままならない。地
方経済は今や深刻な冷え込みに見舞われており、地域社会自体がつぶ
れそうになっている。自民党がつぶれても誰も困らないが、地域社会
がつぶれるのは住民にとって大問題だ。
なぜこんな状況になったのか。その原因は、政府の「地方分権改革」
だ。すなわち、政府は「三位一体改革」と称して地方交付税を削減し、
国から地方への財政支出を大幅に削った。これによって地方自治体の
財政は劇的に悪化した。
「三位一体改革」とは、@税源の地方への移譲、A国庫補助金の縮
減、B地方交付税の削減の3つを指すが、それが断行された04年か
ら07年までの3年間で、国庫補助負担金は4.7兆円、地方交付税
は5.1兆円が削減される一方、国から地方への税源移譲はわずか3
兆円に止まり、国から地方自治体への財政支出は6.8兆円もの大幅
削減となった。
これにより、各分野での住民サービスの切り捨てと地方自治体の財
政破綻が一層深刻化したのだ。全国知事会は08年7月の知事会議で、
このままでは11年度までに地方自治体の財政が破たんするという衝
撃的な試算を発表した。とりわけ地方交付税が財政に占める比重が高
い町村は極めて深刻な財政危機に追い込まれている。
また政府の市町村合併押しつけにより、99年に3232あった市
町村は、合併特例新法が期限切れとなる2010年3月には1753
に減少するという。これにより身近な住民サービスは切り捨てられ、
多くの農山漁村の住民自治が脅かされている。
地方の破壊は明らかに人災である。「地方分権改革」の流れを転換
しなければ、地域社会は早晩壊滅してしまう。こうした国民の声が0
9総選挙における自公大敗という結果を生みだしたことが疑いない。
これを受けて誕生した民社国3党連立政権は、政策合意の中で、地
方が自由に使えるお金を増やすことを明言した。
地方自治体が福祉・教育・医療等で行き届いた住民サービスを行う
上で、自主財源を確保することは当然であり、それについては3党連
立政権が公約通りに実施するか否かを注視する必要があろう。
弁護士 福 山 和 人
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