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米海兵隊は「抑止力」か(その5)
◆沖縄の「地理的条件(ロケーション)」論
海兵隊の「抑止力」を根拠づけようとして持ち出されているのが、沖
縄の「地理的条件」論である。
たとえば、北沢防衛相は「沖縄に駐留している米軍の海兵隊の抑止力
というのは、まず一つには、我が国が攻撃されたときの即応性が大事で
あり、さらにまた地理的条件からアジア太平洋地域で事態が発生したと
きに極めて迅速に効果を上げることができる」、「わが国の防衛、アジ
ア太平洋の平和と安定という意味からすると、沖縄という地政(学)的
な意味は極めて重い」と答弁した(2010年2月15日衆議院予算委
員会)。
長島防衛政府官も「なぜ海兵隊が沖縄に駐留するのかといえば、一に
も二にもロケーション(場所)」。このロケーションから、朝鮮半島が
有事であれば真っ先に飛び込んでいく」、「(琉球諸島周辺の)海域で
活動する中国からどう見えるかというと、やはり嫌だ。(海兵隊が)い
つ出てくるか分からない。これが抑止力だ」と述べている(2010年
3月1日、都内の政治資金パーティ)。
◆沖縄の「地理的条件(ロケーション)」は抑止力の理由とならない
しかし、こうした「地理的条件」論が抑止力の根拠にならないことは、
日本政府の元高官も認めている。
かつて防衛庁の審議官、運用局長、官房長、防衛研究所所長、首相官
邸の安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補などの要職を歴任した
柳沢協二氏(防衛省防衛研究所特別客員研究員)は、「海兵隊はいつで
も、世界のどこへでも出動する。特定地域の防衛に張り付くような軍種
ではない。したがって『沖縄かグアムか』という問いに軍事的正解は存
在しない」と指摘している。
ライシャワー元駐日大使特別補佐官を務めたジョージ・パッカード米
日財団理事長も、「今も沖縄にあれほどの基地が必要なのか。想定して
いる敵はどこなのか。北朝鮮はどう出る、中国をどう見る。そんな掘り
下げた議論をしないで、やれ離島だ、やれ既存基地だと、候補地をむや
みに挙げるばかりでは、いつまでたっても解決しません」(2月17日付
朝日新聞)と述べ、沖縄に米軍基地が必要という議論を疑問を投げかけ
ている。
弁護士 福 山 和 人
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