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米海兵隊は「抑止力」か(その7)
◆北朝鮮の「脅威」について 〜 南への全面侵攻の可能性
東アジア地域における在沖海兵隊の抑止力を必要とする論者が挙げる
のは、北朝鮮の脅威であるが、海兵隊が投入されるような本格的な朝鮮
半島有事が起こることは現実的には想定しがたい。
アメリカは、在韓米軍を2000年から2008年の間に、3万70
00人から2万4600人への大きく削減しているが、これはアメリカ
自身が北朝鮮について南への全面侵攻を想定していないことの証左であ
る。
また平和・安全保障研究所理事長の西原正元防衛大学校校長と神谷万
丈防衛大学校教授を中心とするグループが研究・作成した報告書「日本
にとっての米軍グアム基地再編−再編への積極的関与を」(2007年
9月7日)は、「朝鮮半島有事の中でも、米海兵隊の大規模な投入が想
定されるのは、北朝鮮が、かつての朝鮮戦争のような大規模全面侵攻を
引き起こした場合に限られよう。実際には、そのような紛争が勃発する
蓋然性は高くないと見られる。・・・金正日や北朝鮮指導部の世界観が
いかに特異であるとしても、全面侵攻が北に成果をもたらすという判断
を下すとは考えられない」としている。
◆北朝鮮の「ミサイル」について
2009年4月に北朝鮮が人工衛星を発射する旨通告した際、日本政
府はミサイル防衛(MD)システムで迎撃する方針を決定し、自衛隊法
82条2の第3項に基づき「破壊措置命令」を自衛隊に発令した。タカ
派の論者は先制攻撃論まで唱えた。
しかし、北朝鮮と日本や米国との間の国力には圧倒的な差があり、現
実に北朝鮮が日本に弾道ミサイルによる軍事攻撃を行う可能性は低い。
また仮に北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイルを発射するような事態と
なった場合には、在沖の米海兵隊は全く抑止力にはならない。
その意味で「北朝鮮の脅威」なるものは、海兵隊の沖縄駐留を根拠づ
ける理由には全くならない。
北朝鮮に対しては、専ら軍事的対応のみで身構えるのではなく、6カ
国協議の再開等を含めた外交的解決の努力が尽くされるべきである。
弁護士 福 山 和 人
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