空飛ぶ弁護士のフライト日誌 京都法律事務所
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空飛ぶ弁護士のフライト日誌

空飛ぶ弁護士のフライト日誌ログ─DAY24:パイロットの手 

                              機長:古川美和  先月は「これからオーストラリアに行ってきます」という報告で終わっていた。 それからあまりに長い間更新がされなかったので,もしかしたら古川はオースト ラリアで星になったんじゃないかと心配しておられた継続的読者の皆さん(おら れるかどうか定かではないが),ご安心ください。原稿が遅れていたのは単なる 私の怠慢です(-_-)。  さて,気を取り直して,「手」の話。  私事ですが,最近同業の配偶者が独立開業することになり,その準備で私も何 かと忙しかった(大した協力はしていないが)。新事務所で夜なべをして,ひと り組み立て式の家具を組み立てているとき,軍手をせずに作業をしていたせいで 真っ黒にそそけだった自分の手を見て,しみじみ懐かしく思った。  ああそうだ,学生時代の私の手と言えば,こんな風に,汚いことこの上なかっ たなあ。  もともと,祖母・母・私と代々我が家の女性は手が大きいのが伝統で,しかも 骨太ときている。ごつくて逞しくて女性らしいところは一つもないこの手が,思 春期の私にとっては結構なコンプレックスだった。高校時代は手を見られるのが 何とはなしに恥ずかしかったし,大学1回生のときに先輩から「昔,松田聖子の 握手会で手を握ったとき,信じられないくらい小さくて柔らかかった。それに比 べて・・・」などと失礼極まりない言われ方をしてからは,「もう手なんて知ら んわい」とばかり,手入れもせずにヘビーユーズドしていたものだから,いつも ガサガサ・ぼろぼろだった。  なにしろ,ただでさえ,航空部の生活はお肌の大敵がいっぱいである。外で紫 外線をたっぷり浴びるし,朝の機体シート外しから係留時はハンマーでアンカー (杭)を打ち込んでロープを縛るのも手だし,索点検時は軍手をしててもささく れだった鋼鉄のワイヤーが手に突き刺さる。ワイヤーブラシで銅パイプをこすっ て土を落としたり,ワイヤーカッターで索を切る,切ったワイヤーを銅パイプに 差し込んでニコプレスで打ち付けてつなぐ,パラシュートの先端のO(オー)リ ングを機体の胴体レリーズに装着する・・・。操縦桿を握る以外に,ランウェイ での普段の作業も,手を使わないことはない。しかもみんな,何というか,荒っ ぽいことばかりである。  さらに,私は「機体係」で「ウインチマン」。スパナやメガネレンチ,ラチェ ット,ラジオペンチにニッパーはお友達だし,銅線やステンレス線もよく使いま す。こういうワイヤー系ってささると痛いんですよね。何より,機体の整備や修 理のときには,シンナーやアセトンを大量に使います。女性の皆さんは,マニキ ュアの除光液を強力にしたやつを手指に浴びるところを想像してください。これ 一発で相当の期間,手はガサガサ。しかもその後ウインチ側で廃油やグリースを ハンドクリーム代わりに大量に塗りつけたりすれば,もう最高。  本当に,航空部以外の人とデートをしたら,「君,何してるヒト?」と怪訝な 顔をされかねない手でした。  そんなこんなで痛めつけていたキライな自分の手ですが,操縦教育証明という 「教官」の資格を取ったとき,試験官に「大きな,いい手ですね。操縦の上手な パイロットは,大きな手の人が多いんですよ。」と褒めていただきました。いえ, 手ではなく,操縦を(たぶん)。今では色気づく年でもなし,「働きものの,え え手じゃろ。文句あるかい。」とばかり開き直ってます。  だって,料理は作るし洗濯はするし(するのは洗濯機ですが),その上ボルト を締めたり釘を打ったりといった大工仕事だって,下手したら配偶者(♂)より 上手いはず。ああ,私の配偶者って幸せだなあ・・・なのに周囲の男性諸君から は「古川さんの配偶者になるのって,ホント大変だよね。(俺じゃなくて良かっ た)」と言われるのはいったい何故?                            弁護士 古 川 美 和 







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