空飛ぶ弁護士のフライト日誌
空飛ぶ弁護士のフライト日誌─DAY25:I’m SAFE.
機長:古川美和
以前も書いたが,裁判員制度がいよいよ来年(2009年)5月21日から開始される
ことになった。弁護士会でも,それに合わせて法廷での弁護技術を考えなければという問
題意識があり,盛んに研修などが実施されている。
私もそうした研修に参加することが多いのだけど,法廷弁護技術の研究・講習が盛んな
アメリカから持ち込まれた「法則」が多いので,「反対尋問の3つの”C”」とか,「Pr
imacyの法則」とか,割と横文字が横行するのである。
グライダーでも,日本はどちらかというと後進国だから,「スティックフォワード・オ
ポジットラダー」とか,学習の法則「REEPIR(リーパー):Readiness, Exercise, Effe
ct, Primacy, Intensity,Recency」など,横文字の合言葉が普及していたりする(なかに
は「たこあっぱあせきひこふ」のような日本語暗記版もあるけど。)。
最近の研修のときに,そういうわけでやっぱりまたグライダーのことを連想していて,
(あー,これは今でも使えるなあ)と痛切に思った法則がある。
それが,「I’m SAFE.」。
自家用操縦士とか,資格を取るときには,パイロットとして自分の体調を把握し,管理
するスキルが当然必要になる。体調が悪いときに飛ぶと,本当に大変だから。
そこで,自分の「飛行前点検」,人的チェックリストとして使われるのが,
I Illness =病気
M Medication =服薬
S Stress =ストレス
A Alcohol =飲酒
F Fatigue =疲労
E Emotion =感情
頭文字を取ると,「I’m SAFE.」でしょう?
特に見落としがちなのは,「ストレス」や「感情」。空では3割アタマ,というように,
人間は普通空を飛ぶように出来ていないから,空を飛んでいるという特殊な条件下で地上
と同程度の判断力や思考能力を発揮しようと思うと,意外とメンタルな要因が重要なので
ある。「絶対上手く飛んで,ソロチェックに通らなければ」とかストレスで固くなったり,
怒ったり落ち込んだり乱れた感情では,思わぬミスも発生する。ミスは命取りになる。パ
イロットは,あらゆる意味で自分や周囲に目配りをし,自己管理しなければならないのだ。
と,思えば思うほど,「I’m SAFE.」は今の弁護士生活にも必要だなあ。病気
・疲労・服薬はミスのもとだし,感情をぶつけて尋問するのもよろしくない。ましてやス
トレス発散のため飲酒酩酊の上,書面を起案するなどもってのほか。
「I’m SAFE.」自己管理でいつもパーフェクトな弁護士を目指したい・・・も
のである。
弁護士 古 川 美 和
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