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マンションの管理費に対する法的保護
マンションの管理費が滞納となった場合は、管理組合としては処理に非常に困る事があ
ります。管理組合の役員となった方が頭を悩ませることが多いケースですので、今回取り
上げてみました。マンション管理費が滞納となった場合、その回収について、「建物の区
分所有等に関する法律」において法律上2つの保護が与えられています。
@区分所有権及び建物に備え付けた動産の上の先取特権(区分所有法7条)
A区分所有権者の特定承継人に対する請求権(区分所有法8条)
1.区分所有法7条の先取特権
先取特権とは、管理費等の債権者(通常は管理組合)が、区分所有権及び建物に備え付
けた動産の売却代金から優先して弁済を受けることができる権利です。
管理費の滞納があれば、当該区分所有権や動産を競売・強制執行をすることもできます
し、当該区分所有権にかかる専有部分が第三者に賃貸されている場合は賃料債権の差押え
をすることもできます。もっとも、当該区分所有権に住宅ローンの抵当権等が設定されて
いるような場合は、抵当権等が優先しますので、そうした担保が設定されている場合は、
区分所有権の不動産競売で配当を受けることは現実的ではないと思われます。また、家財
道具などの動産についても資産価値が乏しいことが多い上に、差押禁止動産とされている
ものは競売の対象とならないことから、動産の競売による滞納管理費の回収も困難と思わ
れます。以上から本条文による回収は余り現実的とは考えられません。
2.区分所有法8条の特定承継人に対する請求
これは、管理費等の滞納者が所有している区分所有権が、滞納状態のまま売買等によっ
て譲渡された場合には、新たに区分所有者となった者(買主)に対しても滞納管理費等を
請求することができるとするものです。
通常の売買であれば、マンションの管理費等に未納があれば、仲介業者は、その金額等
を重要事項説明書に記載しなければならず、売買の決済時に売買代金から滞納管理費を支
払ってしまうのが通常ですので、その時点になれば管理費の回収を図ることができます。
競売により売却される場合は、上記のような通常の売買のような手当はなされないこと
になりますが、競売により落札したような人は、支払い能力の点でも問題がないことが多
いので、この方に対する請求を行うことで、滞納管理費を回収する可能性は高くなるもの
と思われます。
弁護士 黒 澤 誠 司
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