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着々と進む教育統制
1.以前教育基本法改定の危険性について述べましたが、「美しい国づくり」を掲げた安
倍内閣のもとで改正教育基本法が強行採決されてしまいました。この間、有事法制、憲
法改正論議等の急激な流れの中で教育分野での法改正がなされることについて危惧感を
否めません。
2.戦争をするためには、人、物、金と制度が整っている必要がありますが、既に物につ
いては、自衛隊という存在があります。金についても世界有数の「軍事費」を使ってい
ます。制度については、有事法制が既に成立し、本丸の憲法9条改正が俎上に上ってい
ます。後は、人の問題です。
3.これは重要な問題です。物や金や制度が整っていても、実際に反対する人がいたり、
人が動かなければ、物事は進まないからです。人については自衛隊がありますが、有事
となったときに全ての国民がお国のために命を投げ出す、あるいはそこまで行かなくと
もお国のためには痛みを我慢するという愛国心を持った国民を作り上げていかなければ
なりません。そのためには、長期的に教育の内容を変えていく必要があります。まず、
国は大切だという愛国心を育てる必要があり、過去の日本の行った戦争を正当化する歴
史を教えることが必要になります。実際、教育基本法改定の前から作る会が日本の戦争
を正当化する内容の教科書を採択させる動きをしたり、国旗・国家法が成立し、日の丸
・君が代に反対した教員らが多数処分を受けるなど不穏な事態が生じていました。
4.確かに最近いじめの問題や学級崩壊といったことがよく話題にされていますが、それ
は本当に愛国心教育が足りないからなのでしょうか。
最近格差社会が広く取りざたされていますが、子供の両親の経済状況が非常に不安定
となっています。非正規雇用が急増し、正規雇用者が長時間労働を強いられ、両親が子
供たちと接する時間が非常に少なくなっていることが子供たちに影響を与えていること
はないのでしょうか。いじめの問題や学級崩壊は全て教師の能力の問題なのでしょうか。
教育の現場では、多忙のため過労死や精神に失調を来す割合が高いと言います。教師
の数を増やして1人1人の子供たちに余裕を持って向き合える時間を確保することの方
がより重要なのではないでしょうか。子供たちに愛国心教育を押しつけて、教師の数を
増やすこともなく教師を締め付けてもこうした問題は全く解決をすることはないと断言
します。
5.今回、改正された教育基本法を受けて、それを具体化する教育3法が改正されようと
しています。具体的には、小学校や中学校の目標に「国を愛する態度」を入れ、教員免
許を10年ごとに見直しをする制度を導入し、教育委員会への国の関与を強める内容と
なっています。子供たちは自ら教育の内容を選択することはできません。子供たちにど
のような教育を行いどのように育っていってもらうかは私たち大人の責任です。国が勝
手に行ったことといういいわけもできません。今の政府は私たちの選挙によって選ばれ
た人たちによって構成されているからです。そういう意味では、今進められている教育
統制は、私たち1人1人の選択として受け止めなければなりません。でも、将来的に今
の流れを変えていくことはできます。自らの反省も含めて今後の教育問題について無関
心・無責任ではいけないと思います。
弁護士 黒 澤 誠 司
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