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離婚時の財産分与とオーバーローンの自宅
不動産がオーバーローンの状態にある離婚が増えています。
不動産にローンがついていない、あるいは不動産の時価がローンを上
回る場合は、不動産の評価方法が問題となるだけですが、オーバーロー
ンになってると非常に難しい問題が出てきます。
裁判例では、「夫婦の協力によって住宅ローンの一部を返済したとし
ても、本件においては、当該住宅の価値は負債を上回るものではなく、
住宅の価値は零であって、右返済の結果は積極財産として存在しない。
そうすると、清算すべき資産がないのであるから、返済した住宅ローン
の一部を財産分与の対象とすることはできないと言わざるを得ない。」
と判断されています(東京高裁平成10年3月13日決定)。
他方、婚姻期間中に住宅ローンを組んで自宅を購入したが、離婚時に
オーバーローンとなっている場合(他に資産無し)、住宅ローンの超過
部分を夫婦で半分ずつにするという考え方もあり得ますが、知りうる限
りでは、そのような判断をした裁判例は見あたりません。
以上からすると、たとえば離婚時に夫名義のオーバーローンの不動産
が存在する場合、妻から過去の住宅ローン返済分の1/2相当額の請求
をしても認められず、他方で夫から妻に離婚時の住宅ローンの超過部分
の1/2相当額の請求をしても認められないということになります。
離婚は本来夫婦間の話し合いで解決すべき問題であり、実際は、当事
者間において上記の考え方にとらわれない解決をしているケースも見ら
れます。
縁あって夫婦となったわけですから、夫婦関係を清算する際も、互い
のことを考えてあげる余裕を持つことが必要でしょう。
弁護士 黒 澤 誠 司
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