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岡根弁護士のぼやき論壇

  
  

人の終に関する法規制? 

 昨年末、親父が亡くなった。  喪主を誰にするのか、葬儀はどういう形式にするのか、短期間の内にいろいろ考えなく てはならないという状況に追いやられてしまい、ゆっくり悲しんでいる場合ではなかっ た・・・。そのときは、生前の親父の言い伝えにより、無宗教による葬儀を行うというこ とにしたのであるが、今までお世話になっていたお寺さんとの関係(僧侶が親父の同級生 でもあった)や田舎の慣習(無宗教なんておおよそあり得ないようなところでした)もあ り、なかなか一筋縄ではいかない。  ま、それはともかく、葬儀に関することを少しだけ調べてみたところ、葬儀に絡む行い は大半がいわゆる“慣習”に沿って行われることになるので、法的な規制が及ぶような問 題は、あまりない。(斎場などの乱立問題はともかくも)  思いつくところでは、刑法には、「変死者密葬の罪」(192条)が定められているが、 せいぜい10万円の罰金・科料で、「検視を経ないで変死者を葬った」場合に処罰される ことになる。死亡診断書に、死亡原因がきちんと記載されない死体を勝手に葬ったらダメ ですよ、ということである。ただ、どうでもいいことだが、「葬る」はもともと「放る」 から来た言葉で、死体を「放った」から「葬る」となったのだから、語源からすれば少し 奇妙な気もする。「葬る」やり方は、土葬とともに、万葉集には火葬をした骨を野山に撒 いていたことを歌った歌もあることからすると、大昔から、土葬にして最初から埋めるか、 火葬をしてその骨を埋めるか、そうでなければ(埋めなければ)撒くか、していたようだ。  しかし、死者を弔う「儀式」は大半を慣習に任せておけばいいが、墓地や埋葬となると、 公衆衛生の観点などから法的な規制が及ぶことになる。その名の通りの「墓地、埋葬等に 関する法律」に定めがある。1948年(昭和23年)にできた法律で、憲法施行が19 47年(昭和22年)だから、ずいぶん古い(内容的には明治・大正のころからほとんど 変わっていない)。  おおよその内容は、@埋葬や火葬は、死亡(死産)後24時間を経過した後でないとで きないこと、A埋葬(土葬)・焼骨の埋蔵は墓地以外の区域ではできず、火葬は火葬場以 外の施設ではできないこと、B埋葬や火葬には市町村長の許可が必要であること(市町村 長は、許可証を交付しなければならない)、C死体の埋葬・火葬を行う人がいないとき (判明しないときも)死亡地の市町村長がこれを行わなければならない、ということにな っている。  実は、散骨については、規定がない。骨を野山に埋めることはできないのであるが、撒 くのであれば、法的規制が及ばないということになる。公衆衛生の観点からすると、埋め るよりも撒く方が問題があるのではないか、という気もしないではないが、宗教的な意識 は千差万別であるし、死んでしまえば、死体は、死体損壊罪の対象とはなるものの、基本 的にはただの「物」である。海や川に撒くことも悉く「禁止」できるのか、などを考える と、規制はなかなか難しいのだろう。また、昭和の後半になると、土地不足から土葬は激 減し大半が火葬になっているが、それでも、焼骨については埋蔵しかダメだとなると、 (基本的には、勝手に墓地を作ることができないので)土地不足の問題が必ず出てくる。  私などは、火葬の後、残った骨は細かく砕いて海にでも撒いてもらいたい、と思ってい る。                            弁護士  岡 根 竜 介



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