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裁判員制度(その3)〜市民感覚を活かせる「評議」に〜
4月14日(土)に、京都弁護士会の手作り創作劇〜真実の行方〜という裁判員裁判の
問題点を市民に問う企画があり、お粗末ながら、私も悪モノ警察官役で出演してきました。
普段使わないような言葉で「演技」させられるので(地が出ていたということをのたまう
人もいましたが、そのようなことは決してありません)、可視化ビデオの撮影のところで
は、何度も噛んでしまいました・・・ 本当に行われている(であろう)すさまじい取
調までは再現できませんでしたが。
ちょうど朝日新聞で、裁判員裁判制度の予行演習として行われている模擬裁判(裁判所、
検察庁、弁護士会がそれぞれの威信をかけて取り組んでいるので、日常的な裁判よりもそ
れぞれ力が入っていたりします)において、非公開で行われる「評議」の中で、裁判官が
自らの意見を個々の裁判員に押しつけるような進行が問題視されているという報道がなさ
れた直後でした。
裁判員制度自体は、2年後の2009年には開始します。6人の裁判員は、一般市民の
中から無作為に選ばれますので、今まで裁判所とは無縁の人でも、突然裁く立場に立たな
ければならなくなります。その時、裁判官から「裁判所のやり方はこうだ!」等という権
威を押しつけるような(模擬裁判で問題視された)状況があるとすると、刑事裁判に市民
が参加する意味が全くないことになります。裁判員となられる市民の皆さんには、普通の
感覚で、裁判官の発想を打破してもらうことを期待します。なんせ、職業裁判官は、99.
9%有罪の裁判を日常的に経験しています。裁判所に連れてこられた被告人を見れば、ま
たやったに違いない、やってないなんて言う被告人には騙されまいぞ、という姿勢で裁判
に臨むことがほとんどだろうと思われます。
ところが、市民から選ばれる裁判員は、最初で最後の刑事裁判に加わることになります。
一生に一度きりの裁きを行うわけです。実際、軽微な犯罪などでは、争えば逮捕勾留期間
が1年以上になることも珍しくないので、最初から諦め、やってもいないのに自白し、裁
判所でもそのままやったことにしておくこともあるわけです。自分と同じような生活を送
っていた人が本当にこんな犯罪を行ったのだろうか、ということを、99.9%で澱んで
しまった目ではなく、純粋な感覚で見てもらいたいのです。
劇に参加して、裁判官に流されない(騙されない)裁判員が、「評議」をリードできる
ような制度になったらいいのになぁと心底思いました。現実は厳しいでしょうけれど。。。
。。
弁護士 岡 根 竜 介
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