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自転車による事故と責任
昨年(2006年)8月に自転車への交通規則違反を取り上げましたが、実際自転車が歩行
者をはねて死亡させてしまうなど、重大な事故も増えてきているようです。東京では、5
月10日に自転車に限った一斉取り締まりが実施されています。悪質なケースでは、いきな
り「赤切符」を切るとのことです。
さて、自転車は、場所によっては、歩道を走ることもできますし、逆に自動車専用道路
は走行できないので、どうしても道交法に言う「車両」という意識が乏しくなってしまい
がちですが、基本的には車両として扱われます。
自転車が歩道を走行することができる場所でも、本当は「徐行」しなくてはならないの
ですが(道交法63条の4)、御池通の歩道なんかはかなり広いので、激走している自転
車もいます。歩行者からすれば正に「走る凶器」です。マナーもものすごく悪い(ケース
が多い)ですし、困ったものです。
歩行者の中には、小さい子どもや障害を持っている方、妊婦さんなどいろんな人がいま
す。周りがよけてくれるなんて思ったら大間違いです。
歩道で自転車に衝突され、1年以上経つのに未だにむち打ち症に悩まれている方もいま
す。その時の自転車を運転していた人は、マナーも社会常識もないようなひどい対応をさ
れていました。
ところで、自転車事故により、刑事責任も生じることがあります。しかし、それよりも
深刻な問題は、民事責任としての損害賠償です。自転車の場合、自賠責保険もありません
し、自転車専用の任意保険も聞いたことがありません。
しかし、自転車で人をはね怪我をさせてしまった場合でも、民事責任は自動車事故と同
じように発生します。場合によっては、数千万から1億円を超える賠償義務が発生するこ
ともありえます。
運悪く、後遺障害が残るような場合には、数千万円は覚悟しなくてはなりません。無灯
火で歩行者に衝突し重症を負わせ、5000万円もの賠償を命じられた高校生もいます
(2002年)。
昨年5月10日夜には、帰宅途中の会社員(40代)が歩行中の女性(80代)をはね
て死亡させてしまったという事故が起きていますし、今年4月には、歩道を自転車で通行
中の男性(50代)が、傘を差しながら自転車に乗っていた高校生に接触されて転倒し、
さらに運悪く車にはねられ死亡されるという事故も起きています。自転車を運転していた
高校生は重過失傷害の現行犯で逮捕されています(傘差し運転はそれ自体違法です)。
被害を受けて怪我をするのもつらいですが、怪我をさせてしまった場合も非常に深刻な
事態が待ち受けています。免許があるわけではないですが、自転車に乗るときでも、最低
レベルとして自動車の運転と同じくらいの注意は必要ですね。
弁護士 岡 根 竜 介
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