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岡根弁護士のぼやき論壇

  
  

山登り編(再び2合目に戻って・・・)

 山岳遭難事故に想う  北アルプスの大日岳で起こった雪庇遭難死亡事故で、今年の7月、原告が全面勝訴する 和解が成立しました。文部省(当時)の登山研修所が毎年行っている大学山岳部リーダー 研修会が、2000年3月に富山県大日岳で行われた際、研修所の講師が登山ルートを誤 り、雪庇と言われる雪の屋根(風で稜線上に吹きだまりができ本来の稜線とは異なるとこ ろに稜線があるように錯覚してしまう)に踏み込み、休憩を取ったため、雪庇が崩壊し、 研修生2人が若い命を奪われたという事件です。  私は、この事件の代理人にはなっていませんが、大学時代山岳部に所属しており、その 当時の同級生が代表してこのリーダー研修会に参加したこともあることから、興味を持っ ていました。(この頃は、毎日の生活費もままならないような経済状態でしたので、山岳 部では主将もさせていただいていましたが、費用面から参加を見合わせただけだったかも しれません。)  この事故で、国は、吹きだまりの規模から雪庇の予見ができないとして責任はないと言 っていましたが、山登りをする岳人の端くれとして、原告全面勝訴に素直に喜んでいます。 この和解の後、原告(亡くなった大学生の両親ら)に対して、国はようやく謝罪をしたよ うですが、国が主催した研修において生じた事故ですから、謝罪が遅すぎたように思いま す。  山登りでは、たとえば講師になるための資格試験のようなものはありません。それぞれ が積み重ねてきた経験だけです。ですので、自称ベテラン、実質素人(に毛が生えた程 度)と言う人が存在します。  この事件を聞いて以降、このリーダー研修(学生の頃は「文登研」(ぶんとけん)と呼 んでいました)をネットで調べてみると、これでよく事故が起こらないなぁというような 杜撰な山行が繰り返されているように思われました。ある程度実力のある大学山岳部員が 参加していたのであれば、このような事故の発生も予見できたのかもしれません。  この事故でも、夏には(稜線の陰に隠れて)見えないはずの山が見えたというのですか ら、講師であるなら、そこが稜線から外れていることは、わからないといけません。大日 岳はもともと雪庇ができやすい山域です。研修として、研修生を連れて行くのですから、 その程度の判断力がないと、他人を山に「連れて行く」ことはしてはいけないことです。 同じ条件で行くなら、自己責任で済むことでも、「連れて行く」場合はその人の命を一手 に握ることになります。ですので、それだけ責任が重くなるのです。リーダーの判断が、 今回の事故にように、パーティー全員の命に関わるのですから。  自分の実力不足で事故に遭った場合は正直あきらめざるを得ません。しかし、他人を巻 き込むことだけは防がないといけません。ですので、最低限その程度の実力(体力、気力、 知識等)は、もっていたいものだと思いを新たにしました。20年前ならともかく、今の 力ですと、とても「連れて行く」レベルではありませんので・・・                             弁護士  岡 根 竜 介



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