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道路交通法改正(9月19日から罰則強化)
1 ここ数年、飲酒運転による重大な事故がクローズアップされ、2001年に引き続き
2007年6月に罰則が強化された法案が成立し、9月19日から適用されるようになり
ました。
どのように重くなったのかというと、酒酔い運転では、「3年以下の懲役または50万
円以下の罰金」から、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」というように、懲
役の上限、罰金の上限とも引き上げられました。酒酔い運転とは、アルコール濃度に関わ
りなく、アルコールの影響等により正常な運転が困難な状態での運転をいいますが、通常
であれば、アルコール濃度が酒気帯び運転の数値以上でなければ、該当することはないと
思われます。
酒気帯び運転の場合は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」から、かつての
酒酔い運転と同じ「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となり、1ランクアップ
させられました。
それにとどまらず、今回の改正は、飲酒運転をするおそれのある者に対する「車両の提
供」「酒類の提供」「同乗」がそれぞれ単独で処罰の対象となりました。飲酒運転をしそ
うな人に車を貸したり、お酒を勧めたり、乗せてくれと頼んで同乗したりすると、それだ
けで処罰されることになります。
飲みに行くときにみんなで車に乗ってでかけ、運転代行を頼まず、そのまま乗って帰っ
たりすると、一網打尽、全員処罰されるおそれがあることになります。駐車場を完備する
飲食店などは、運転手には絶対に酒を勧めてはいけないでしょうね。
2 ところで、悪質な飲酒運転による事故を防止する必要があるのはその通りでしょう。
しかし、飲酒による事故の統計的な数字からすると、実は、顕著な増減もなく変動もない
中で、これだけ罰則が強化されてくると、刑法体系自体の整合性がとれているのか、疑問
も出てきます。
マスコミを賑わす飲酒による事故はたしかに悪質ですし、飲酒して運転をしたら危険き
わまりないことは、飲む前からわかっていることですから、飲酒運転について罰則強化は
やむを得ないのかもしれません。
しかし、自動車運転過失致死傷罪という犯罪が創設され、業務上過失致死傷から比べ、
強化された罰則が適用されるところまでくると、過失という概念自体の統一的な理解はも
はや不可能なところにまできてしまったのか、という思いがします。
罰則強化だけで、交通事故はなくならないことは、常識的なことですので、飲酒運転罰
則強化の陰に隠れて、過失を故意犯並みに処罰するのは、私の理解としてはついていけな
いところです。
国がやるべき道路や車両そのものの安全対策も不十分なまま、市民にだけそのツケを回
しているという印象がぬぐえないのです。
いくら防ごうと注意しても完全に防ぎきることができないのが、「過失」なのですから。
弁護士 岡 根 竜 介
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