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子どもの権利条約と民法
1 12月9日、京都弁護士会主催の「憲法と人権を考える集い」で、夜回り先生こと水谷
修さんを迎えて、講演会とパネルディスカッション「子どもが見えないおとなたちへ」が
開催されました。
その中で、日本も国連・「子どもの権利条約」に批准しており、国内法として生きてい
るのに、ほとんど活かされていないのではないか、という問題にも言及されていました。
この間、少年法が大幅に(悪い方向に)改正されましたが、ここにも、子どもの権利条約
の精神は全く活かされているとは思われません。
2 子どもの権利条約には、子どもを一人の人間として独立した主体であることを保障す
る様々な自由や権利が定められています。子どもたちが成長発達する具体的な目標として
「子どもの個性(人格)、才能および精神的・肉体的能力を可能な最大限まで発達させ、自
分らしくかつ他者の人権を尊重できるような人間になること」を掲げています。その目標
実現のために、最も重要な権利が「意見表明権」です。
子どもが人間としての存在に由来する自分のニーズや欲求を外部に表明する権利です。
子どもに対する施策などは、その子どもの「最善利益」が確保されるように配慮されな
ければなりませんが、何が「最善利益」なのかは、おとなが勝手に判断するのではなく、
子どもの「意見表明」を通じて判断されなければならないのです。
これは、何でもかんでも子どもの我が儘さえも聞き入れなくてはならないというもので
はありませんが、子どもの意思を尊重し、「子どもの専門家」としての子どもの意見を十
分考慮しなければならないことはいうまでもありません。
3 ところが、民法では、親権の効力として、監護教育権や居所指定権、にとどまらず、
「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、
これを懲戒場に入れることができる」(822条)ことまで規定されています。なお、子ども
を「これ」と表現していることにも、子どもを物扱いしていることが見て取れます。日本
の子どもたちは、20歳になるまで、こんな物騒な親権に服さなければならないのです。
戦後まもなく、憲法が定められたことに伴い、男女平等を実現するよう民法が改正され
ましたが、親子間は相変わらずの状況で、子どもを独立した人格主体として扱っていると
はとてもいえるようなものではありません。
4 2008年は、平和な日本(憲法9条2項)とともに、子どもの権利条約の精神が満ちた日本
を伝え残していく、そんな転機となる年にしたいものです。
弁護士 岡 根 竜 介
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