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岡根弁護士のぼやき論壇

  
  

ドッグラン内での事故〜どんなときに責任を負うの?

 「犬と私の10の約束」。いま上映中の映画です。愛犬家も多くなってきました。うちにも、 1歳の黒ラブがいます。ほんとかわいいですね。家族同様に付き合っている方もたくさんいま す。その反面、やはりトラブルもついて回ります。  飼い犬が他人に怪我をさせた場合、その飼い主は、だいたいの場合、損害賠償の責めを負う ことになります(民法718条)。条文上は「相当の注意をもって」対処していた場合には、 責任を負わないとなっていますが、これが認められることは極めてまれなケースと思っていた 方がいいかと思います。    ところで、犬を自由に(リードを外してもOKというところ)できる施設として、ドッグラ ンができつつあります。京都では、まだまだ数が少なく、有料施設が大半ですが、東京などで は、無料で利用できるところも増えています。ワンちゃんも生き物ですから、好きに走り回り たいし、運動不足でストレスがたまり、入らぬトラブルのもとになることもあります。なかな か、リードにつないだままの散歩では、ワンちゃんの種類にもよりますが運動不足解消まで付 き合うことは至難の業です。  そこで、ワンちゃんを自由に走り回ることのできるスペースとして、ドッグランは非常に重 宝します。  でも、ワンちゃんも、それなりに躾をしていても、やっぱり他のワンちゃんとの接触で興奮 したりもします。そんなとき、運悪く他人に怪我をさせることも起こってしまいます(犬同士 の怪我も問題になりますがここではとりあえず置いておきます)。  そんなとき、どこまで責任を負わないといけないのでしょうか。ここでは、やはり、ドッグ ランという元々飼い犬を自由にできる施設であるということを考慮する必要があります。利用 する方も、大型犬も含めて、いろんなワンちゃんがいることを念頭に置いて利用する必要があ るということです。  最近出た裁判(平19・3・30東京地裁)の中では、先の「相当の注意」とは、「通常払 うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対応できる程度の注意義務まで課したものでは ない。」としました。その上で、ドッグラン内においては「引き綱(リード)を外すと制御が 利かなくなるとか、引き綱を外す前に飼い犬が興奮しているなどの特段の事情がなければ、引 き綱を外し、犬が自由に走り回ることができる状態におけるものであることを前提としなけれ ばならない」としています。  そして、「飼い犬をドッグランの雰囲気になじませてから引き綱を外した後は、犬が興奮し て制御が利かないような状態が発生しないよう、または、そのような事態が発生したり、事故 が発生したとき、直ちに対応することができるように、犬を監視すれば足りる」のであり、「 ドッグランのフリー広場中央部に、飼い主を始め人間が立ち入ることは、危険な行為であり、 異常な事態」であるとして、そのような事態(ドッグラン中央付近を人が突っ切る行為)を予 測して、飼い犬の行動を監視し続け、制御するまでの必要はないとしました。  ドッグランは、ワンちゃんを自由に走らせることのできる数少ないスペースです。利用する 方も、そのことを踏まえて、自らの安全を確保するようにして利用しないと、ますますワンち ゃんの遊び場所が減ってしまうことにもなってしまいます。その意味では、ドッグランという 施設の特徴を考えた判決であり、今後の、ドッグラン内での事故について、ひとつの基準を示 したものであると思います。  時々、ワンちゃんとともに、子ども(人)におやつを持たせて、大型犬もOKのドッグラン 内に入れる飼い主(親)も見かけますが、これはほんと危険だと思います。そりゃ、おやつに 目がないわんこが多いですから、飛びかかりますよ。30キロのわんこに飛びかかられたら、 かなりの衝撃ですから、子ども(人)なんか吹っ飛ばされます。ちょっと考えたらわかりそう なものです。  こんな非常識なこと(異常事態を自ら作り出している)をしておいて、いざ子ども(人)が 怪我をしたら、きっとそのワンちゃんの飼い主に「損害賠償をしろ」などと詰め寄るんでしょ うね。  こういう場所でも、やっぱりモラルが問われますよね。                             弁護士  岡 根 竜 介



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