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遺言は子どもたちへの「通信簿」?
大体の順番はありますが、人の死は突然にやってきます。子どもが
親より先に無くなるのが最大の親不孝である、とも言われます。順番
は守るに越したことはありませんが、人生何があるのかわからない、
だからこそ、人生の総仕上げとして、最後の意思決定をしておくのが
遺言という制度です。
遺言とは、広辞苑によると「死後のために物事を言い残すこと。ま
たその言葉。法律用語では「いごん」という」とあります。
また、ある親族法・相続法の教科書には、「遺言は、遺言者が死後
に効力を発生させることを目的としてなす法律行為、すなわち死後行
為である。法律行為の類型としては相手方無き単独行為であり、また
遺言者の死後に効力が発生することから、遺言者の真意を確保する必
要があり、そのために一定の方式の履践を要する要式行為とされる
(民法960条)」と説明されています。
なんだかよくわからないけれど、自分が死んだ後に自分の思ったよ
うな法的関係を作り出すために書いておくもの位で十分だと思います。
ただ、遺言の内容の実現は、死後に問題になるから死んでしまった
後には訂正もできないし、書いておいた言葉の説明もできないから、
法律でいろいろ決めごとがあるというわけです。
遺言で実現できること(「遺言事項」と言います)も法律で定めら
れています。
しかし、遺言書に書いておく内容は、それに法的効果が認められる
かどうかはともかくとして、遺言事項以外のことを書いたからといっ
て無効になるものでもありませんし、そんなに制約があるわけではあ
りません。
まさに子どもたちを育ててきた親として、子どもたちの通信簿をつ
けるつもりで遺言書を書けば十分です。
遺言を書いても、相続人の1人が「こんなの認めない」と言い張っ
たらおしまいではないのか、と心配される方もおられるのではないか
とも思いますが、遺言はそんなに脆弱なものではありません。
それに、1回書いたからといってその内容に自らが拘束されるわけ
でもありませんので、気が変われば新しい遺言書を作ることもできま
す。新しい遺言書を作れば、古い遺言書は(内容が重なる範囲で)無
意味なものになります。わざわざ古い遺言書を訂正する必要もありま
せん。
たとえば、老後の面倒を見るからという約束で、全財産を譲るつも
りだったのに、裏切られた・・・という場合は、別の相続人に全財産
を譲る(相続させる)という遺言を書くこともできるわけです。
切り札みたいなものですね。
今回はさわりだけですが、これから遺言書にどんなことを書いてお
けばそれが実現できるのか等にも触れていこうと思っています。
弁護士 岡 根 竜 介
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