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「一筆をとる」ということの意味〜その2
前回は、「一筆をとる」ということの意味について少し書いてみました。
今回も引き続き「一筆をとる」ということについて考えてみます。
前回、一筆書いてもらうことは、「約束」を明確にして、将来争いが生じたと
きに、証拠にするという意味があること、書面にしていなくても、それ以外の方
法で、契約があることが証明できる場合は、必ずしも、一筆が必要不可欠のもの
ではないこと等を、書いてきました。
今回は、逆に、一筆をとらないと不利益になることを書いてみます。
保証契約についてです。
保証人になると、時に、思っても見ない請求をされることがあることは、皆さ
んもよくご存じのことと思います。
「じゃああなた保証人になってくれますか」「ああいいですよ」「ここにいる
人みんなが証人ですよ」「わかった。私は嘘は言わんよ」等という会話があって、
一筆つまり「書面」をもらうことなく、保証契約が成立したと言うことができる
かという問題です。
前回書いたように、一筆は「保証契約が成立した」ことの証拠であるから、一
筆が無くとも、その時にいた人たちが、みんな証人として証言すれば、保証契約
は成立しているとして、請求が可能でしょうか?
実は、この問題の答えは、その保証契約が締結された時期によります。
といいますのは、平成16年12月に民法の改正がありました。
その改正により、民法446条2項が規定されました。そこには、「保証契約
は、書面でしなければ、その効力を生じない。」と書かれているのです。そして、
この改正に当たり定められた付則3条には「新法446条2項及び3項の規定は、
この法律の施行前に締結された保証契約については、適用しない。」とされてい
ます。
その民法の改正が施行されたのは、平成17年4月1日です。
つまり、平成16年12月の民法の改正により、平成17年4月1日以降は、
保証契約は、書面でしなければ、効力を生じないことになったのです。
したがって、平成17年3月31日までに締結された保証契約は、書面でしな
くても有効ですが、4月1日以降は、保証契約は書面でしない限り無効になると
いうことなのです。
法律の改正があったときには、必要に応じて知識を補充しなくてはならないの
です。
弁護士 佐 藤 克 昭

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