Q. 夫がすべての財産を友人に遺贈してしまいました。妻の私は一切財産はもらえないのでしょうか。
A. たとえば、子どもがいない老夫婦の場合、夫が遺言で全財産を第三者に与えてしまえば、老妻は翌日から路頭に迷うことになってしまいます。
このように被相続人と生活基盤を共にしている相続人の生活を保障するために、法は遺留分という制度を設けています。
遺留分とは、相続財産のうち、法が相続人に取得させるべきとする財産の割合のことです。遺留分が認められているのは、配偶者、子、親であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。
遺留分を主張するかどうかは遺留分権利者の判断に任されており、遺留分を侵害されてもそのままにしておいたのでは、遺留分に見合った財産を取得することはできません。
遺留分を現実に確保するためには、遺留分を侵害する贈与や遺贈を受けたものに対して、その贈与などを減殺し、遺留分の確保に必要な範囲で財産を返還するよう請求します。
減殺の意思表示を行うと、その対象となった贈与などは、遺留分を確保するのに必要な範囲で効力を失います。
減殺請求は、相続が開始していることを知ったときから、1年以内に行われなければなりません。後日争いになることに備えて、請求は内容証明郵便で行うのが無難です。
なお、遺留分は、相続開始後はいつでも放棄できますが、相続人のうち1人が遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分には影響しませんので注意してください。