Q.「ドメスティック・バイオレンス」とはどのようなものですか?
A.ドメスティック・バイオレンス、略してDV。夫婦や恋人など親密な関係にあるとされる男女間において加えられる暴力を言います。その被害者の多くは女性です。
きわめて重大な人権侵害が生じているにもかかわらず、今までは、このような暴力は、夫婦間のプライベートな問題として、社会はかかわってきませんでした。
しかし、2001年4月、被害者救済を目的に「配偶者からの暴力及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)ができ、同年10月から施行されてきました。
この法律には「保護命令」という制度があります。
たとえば、妻が夫から暴力を振るわれていた場合、夫に対し、「自宅から出て行け」(退去命令)、「つきまとい、はいかいをするな」(同法10条、接近禁止命令)といった命令を裁判所で出してもらうことができるものです。
申立は、被害者の住まいを管轄する地方裁判所に対してできます。
保護命令が出されると裁判所から警察へ連絡が行きます。
連絡を受けた警察は被害者に連絡をとり、被害者の身の安全の確保にあたることになります。
また、夫が保護命令に違反すれば、逮捕され懲役や刑罰を科せられることにもなります。
この法律は、2004年12月に改正され施行されています。
2003年度のDV被害相談件数は4万3225件で、前年度比で約20%も増えており、改正法によって被害者がより安全、確実に救済されることが求められています。
改正されたポイントは以下のとおりです。
1.「暴力」の定義の拡大
身体的暴力にとどまらず、言葉の暴力や精神的暴力なども含まれることになりました。(ただし、保護命令の対象となるのは、従来どおり身体的暴力に限られます)
2.元配偶者に対しても保護命令が可能になりました。
離婚しても暴力が継続されるケースも多く、従来は離婚後の被害者は保護が欠ける状態になっていました。
3.被害者と同居している子への接近禁止命令が可能となりました。
4.退去命令の期間が2ヵ月に拡充され、再度の申し立ても認められることになりました。
被害者が身辺整理をしたり転居するために配偶者を自宅から退去させる退去命令は、旧法では期間が2週間しか認められていませんでしたが、2ヵ月間に拡大されました。
5.退去命令が発せられると、配偶者は、退去と合わせ、退去した住居の周囲をうろつくことも禁止されました。
暴力のない平穏な人生を再出発しようと願う女性にとって、改正DV防止法が、その背中を押してくれる力になることを願います。