Q.退職した後、ゆっくり老後を送りたいと考えて、3年前に、退職金を元手にして分譲マンションを購入して夫婦2人で暮らしてきました。
ところが最近になって、私の前に住んでいた前の所有者がマンションの管理費用を7年間も滞納していたらしく、管理組合から滞納分の約200万円を請求されました。私は滞納管理費用は前の所有者の方で処理するとの約束で購入していましたので、大変驚きました。もちろん私は管理費用をきちんと支払っておりました。どうしたらよいでしょうか。
A.あなたは、前の所有者の管理費用の滞納分を継承することになります(区分所有法8条)ので、主な問題点は、その管理費用の消滅時効が一般の債権と同様に10年の消滅時効(民法167条)にかかるのか、それとも、定期給付債権にあたるとして5年の消滅時効(民法169条)にかかるのかどうかです。
これまでほとんど議論されてこなかった問題ですが、近時、最高裁判所は、管理費用の債権は基本権である定期金債権から発生する支分権として民法169条所定の債権にあたると判断(最高裁第二小法廷平成16年4月23日判決)しました。
この判決によれば、2年間の滞納分は支払わなければなりませんが、その余の5年間の滞納分は消滅時効にかかっていることになります。
もっとも、あなたが管理費用を支払っていることが債務の承認に該当するかどうかの問題があります。
また、管理組合は、前所有者の管理費用について、7年間もの長期に渡り、金額も約200万円という多額の滞納を放置し、しかも、3年間もあなたへの通知を怠ってきたわけですから、消滅時効にかかっていない2年間の滞納分の支払い請求は、権利の濫用に該当するとして、支払を拒絶しうる可能性もあります。
約200万円もの多額の請求ですし、消滅時効の問題にしても、権利濫用の問題にしても、簡単な問題ではありませんので、弁護士に相談されることをお勧めします。