「欠陥住宅(けっかんじゅうたく)」という言葉は広く使われていますが、欠陥は法的な言葉で言うと「瑕疵(かし)」。その物に本来あるべき機能や品質、性能などが備わっていない、というほどの意味です。「使いにくい」といったデザインや間取りの問題は、それが契約の内容になっていれば「契約不適合責任」を問えますが、そうでなければ瑕疵として損害賠償などを請求することは難しくなります。また、どんな住宅でも住んでいるうちに壁の微細なひび割れや建具の立て付けの悪化など、多少の経年劣化は生じるものです。欠陥住宅は、あくまで建築基準法や施行規則、各種ガイドラインなど、規範とされる基準に達していない瑕疵があった場合に初めて、不法行為や契約違反などで損害賠償を請求できることに注意が必要です。
購入や建築した住宅に瑕疵が発見された場合、売主や建築業者が「瑕疵担保責任」(※2020年4月1日以降に契約した住宅については、民法の改正により、「契約不適合責任」となります。)を負うべき期間内であれば、これに基づき補修等を請求することになります。ただし、その瑕疵が施主の注文に基づく場合や、購入する前に明らかにわかるような瑕疵の場合は請求することができません。
〇瑕疵担保責任期間は…?
2020年3月31日以前に契約した住宅について、瑕疵担保責任を負うべき期間は、民法で、売買の場合隠れた瑕疵があることを知ってから1年、請負の場合木造住宅で5年、鉄筋コンクリート住宅で10年と定められています。しかし、ほとんどの契約ではそれより短い期間に限定されており、契約が優先されてしまいます。こうした問題から、2000(平成12)年4月1日より「住宅 の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、これ以後に新築された住宅については、①構造耐力上主要な部分(住宅の基礎や壁、柱、土台等)と②雨水の侵入を防止する部分(屋根や外壁等)の瑕疵に限り、完成引き渡しから10年間の瑕疵担保責任期間が義務化されました。
なお、2020年4月1日以降に契約した住宅については、契約に特に定めがない限り、不具合を知ったときから1年以内に、不具合の内容を「通知」することが必要です。その後、不具合の内容や程度に応じて、修理を請求したり、損害賠償や、修理に応じない場合には代金の減額や契約の解除などをすることになります。以下、2020年3月31日までに契約した住宅を前提にご説明します。
〇注文住宅・建売住宅の場合
2000年4月以降の新築であって、上記①②の瑕疵であれば、10年間は請負業者・売主に対して補修・損害賠償等が請求できます。それ以外の部分の瑕疵については、契約書で瑕疵担保責任期間を確認し、期間内であれば補修等を請求しましょう。仮に期間を過ぎていたとしても、その瑕疵が建築基準法など法令に違反した設計・施工により生じたといえる場合は、不法行為による損害賠償請求を行うことも考えられますので、専門家にご相談ください。
〇中古住宅の場合
前の居住者から不動産業者の仲介で購入した場合は、契約書で瑕疵担保責任が免除されたり、期間が1年より短く制限されていることがよくあります。購入時によく確認することが必要です。
不動産業者が売主の場合は、宅地建物取引業法により引き渡しから2年間は業者が瑕疵担保責任を負うこととされています。
いずれの場合も、期間を過ぎていても売主が瑕疵を知っていたといえる場合は、契約責任や不法行為責任を追及することも考えられます。
〇リフォームの場合
住宅のリフォームは、建築業者などに建物改修を注文した「請負契約」となります。改修工事がまだ完了していないうちに、「頼んだのと違う工事をされている」「思っていた出来栄えと違う」などという場合は、請負契約に基づいて「契約どおり工事せよ」と請求することができます。請求しても契約どおり施工されない場合は、請負契約を解除して現状に戻せ、ということも考えられます。業者の契約違反の結果、損害が出た場合は、損害賠償を請求することができます。
工事が完了した後に欠陥に気付いた場合は、「瑕疵担保責任」の問題となります。リフォームの場合に問題になるのは、「どこまでが既存の住宅で、どこまでがリフォーム工事で追加・修繕した部分か」ということです。元々あった住宅の欠陥で、リフォームで工事等を行っていない部分については、瑕疵があっても損害賠償等を請求することができません。
近時では、住宅瑕疵担保履行法に基づき、リフォーム時の検査と保証がセットになった「リフォーム瑕疵保険」を扱っている登録リフォーム業者も増えています。安心できる業者を選ぶことは、瑕疵防止の第一歩です。
それでも瑕疵が発見されてしまったときは、弁護士に早めにご相談ください。