契約は口約束でも成立します
契約とは、当事者間の意思の合致(合意)です。例えば「売ります」(申込み)と「買います」(受諾)で売買契約は成立します。従って、原則として、意思が合致すれば、口頭でも契約は成立します。ただ、口約束は「言った」「言わない」というトラブルが生じることがありますので、契約書を作成すれば、少なくとも「言った」「言わない」というようなトラブルはなくなるでしょう。
保証契約は口約束だけではダメ!
すべての契約が口約束だけで成立するわけではありません。法律で、書面作成が契約成立の要件とされているものもいくつかあります。
例えば、保証契約は書面でしなければ効力を生じません(民法446条2項)し、「任意後見契約」は公正証書によらなければなりません(任意後見契約に関する法律3条)。その他、借地借家法の中にも公正証書等の書面を作成しなければ成立しない契約も存在します(22条・23条3項・38条)。
協議離婚の予約は無効です
離婚する際に、慰謝料や財産分与・養育費などを定める協議書を作成することがあります。協議書の中に、それらと合わせて「子どもが18歳になったら離婚する」「〇年〇月に離婚届を提出する」というように将来の離婚について契約したいという人がおられますが、将来の離婚については気が変わるかもしれませんし、たとえ当事者間に意思の合致があっても、そのような離婚の予約は無効です。
「ヴェニスの商人」における契約の解釈
シェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」では、「もし借りた金を返せなかったら肉1ポンドを切り取ってよい」という契約でした。判決は、血を流してよいと書いていないので血を流して肉を切り取ることは認めないとしました。「厳格解釈」です。しかし、「肉を切る」には「血を流す」ことが前提となっていると思われます。そもそも「肉を切り取る」というような契約は、「人を殺す」というような契約と同じく、端的に、公序良俗に反し無効(民法90条)と言えるでしょう。