後遺障害がのこったら
交通事故により怪我をした場合に、治療が終了しても何らかの異変がのこることがあります。これまでのようには膝が曲がらなくなった、首や肩に痛みがのこり首が動かしにくくなった、といった症状がのこってしまう場合、後遺障害による損害賠償が問題となります。
一般には、症状が一定のレベルで固定した(治療効果が望めない)と診断された「症状固定」の日までは、怪我の治療(の費用等)が中心となり、固定日以降は稼げなくなった額をどう計算するのか(逸失利益)等が問題になります。
「固定」後は、治療を受けても、治療費としては保険金の支払を受けることはできません。しかし、「固定」の診断がなされると、交通事故による損害額の全体を確定することができることになるので、最終解決に向けた交渉が可能となります。
いずれにしても、「症状固定」はある程度幅のある概念で医師の裁量にもかかわることから、医師と相談をして、どのタイミングで固定とするのかは決めてもらいます。
ただし、場合によっては、相手の保険会社から治療費について保険金の支払いを打ち切るといわれることもあります。必ずしも言われるままに応じる必要はありませんが、実際打ち切られれば、当面自費で治療を続け、固定の診断を受けた後、裁判の中で治療費として認められるかどうかを争うしかないかもしれません。
後遺障害等級
交通事故による後遺障害では、のこった症状の程度に応じて、重い第1級の障害から比較的軽い14級までに分類されています。その程度に応じて、慰謝料の金額や労働能力喪失率が段階的に定められます。
等級の認定は、自賠責保険金の給付を受ける場合は、損害保険料算出機構(平成14年7月に、自動車保険料率算定会(自算会)と損害保険料率算定会が統合してできた組織です。)の調査事務所が行います。この判断の基礎となるのは、医師の記載する後遺障害の診断書です。ところが、この診断書の記載が不十分であると、思っていたより低い等級しか認められないこともありますので、診断書作成に当たっては医師と十分に協議する必要があります。
認定された等級に納得ができない場合には異議申立の制度もあります。また、裁判を行うこともあります。
ただ、後遺障害の等級が認定されても、自動的に賠償額が決まるわけではなく、運動機能障害の程度によっては、認定された等級よりも低い労働能力の喪失割合に応じた賠償しか認められないこともあります。逆に、非該当と判断されても、症状によっては、一定の慰謝料等が認められることもあります。