1. 知っておいたほうがよい身近な借家契約〈身近な契約のはなし〉
身近な契約のはなし

知っておいたほうがよい身近な借家契約〈身近な契約のはなし〉

 京都の夏の暑さは昔から有名ですし、冬の寒さも底冷えすると言われるほど厳しいので、エアコンは必需品です。アパートを借りる時、自分で買って取り付けました。では、退去するときにエアコンはどうしたらいいのでしょう。

 民法の規定からどのように解されるか、というところからお話しします。

 まず、アパートに従として付合した物はアパートの所有者の物になる(民法242条)と規定されています。しかし、エアコンは、アパートに取り付けたとしても比較的容易に取り外すことができますので、アパートの付合物には該当しません。ですから、エアコンはあなたのものです。

 つぎに、アパートを退去するとき、借家人は、借りた後にアパートに附属した物を全て収去する義務(民法622条、599条1項)があります。あなたのエアコンも、取り外さなければならないのです。

 さらに、借家人は、借りた後に生じさせたアパートの損傷を原状に復する義務(民法621条)があります。もっとも、通常の使用及び収益によって生じたアパートの損耗及びアパートの経年変化による損傷については、同条で除外されています。そこで、借家人が借りた後にエアコンを設置した際に生じたビス穴について、原状に復する義務があるのかどうかが問題となります。現代において、エアコンは、テレビと同じように一般的な生活をしていくうえで必需品になってきていることから、エアコン設置の際のビス穴は通常の使用収益によって生じた損耗に該当すると考えられるようになりました。国土交通省住宅局2011年8月作成にかかる、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)に、その旨の記載があります。ですから、ビス穴はそのままにしておいても結構です。

 民法の規定からはこのように考えられます。

 もっとも、例えば新しいエアコンを買いたいと思っている借家人は、古いエアコンをアパートに置いていきたいと希望することがあります。その場合、大家さんと話し合って、合意の上で引き取ってもらうことも可能です。そこで一つの知恵ですが、アパートを4年から6年程度は借りようかなと考えている借家人としては、エアコンの一般的な買い換え時が概ね10年ですから、退去時に、エアコンを新しくしたいと希望するかも知れません。そこで、アパートを借りる際の契約において、借家人が希望したときは大家さんがエアコンを引き取ることを応諾するようにしておくことです。その場合は、エアコンを持って行くこともできますし、大家さんに引き取ってもらうこともできて、撤去費用の節約になります。