原子力発電所の事故や再稼働が問題となっている昨今ですが、地方自治体をはじめ、各地で再生エネルギーを産み出し、地域を活性化させる取り組みが進んでいます。
その大きなテーマは、「エネルギーの地産地消」です。
たとえば、竹を用いたバイオマス発電。
宮津市では、放置されていた竹林から竹を採取、加工し、あるいはペレットで、あるいはエタノールを製造して燃焼させ発電する事業が行われています。
竹は、地元の住民が伐採したものを使い、発電用に用いるほか、抗菌剤や建材に用いられます。
次に、食品残滓(食べ残し)を発酵させてえられるガスを用いた発電。
京丹後市では、家庭の生ゴミや学校給食・企業の社員食堂から出る生ゴミを用いた発電が行われています。
企業などから提供される生ゴミは、日常的かつ大量に生じるため、発電原料として供給を得やすいのですが、家庭ゴミの場合は地域住民の協力が必要です。
生ゴミとその他のゴミを分別してもらわなければなりません。
そのため、自治体ではいかに住民の協力を得られるかが課題で、地道な努力が積み重ねられています。
食品残滓を用いた発電では残滓を発酵させてガスを得て発電します。
発電量は、売電収入を得られる規模はありますが、独立した事業として運営できるほどにはなっていないとのことです。
ガスを発生した後の残りカスは、農業用液肥(肥やし)として用いられています。
液肥は、地域住民に提供され、特に水田の前肥、葉物野菜の肥料として有効活用されています。
担当者の話では、「プチトマトが普通のトマトになってしまい、農家からクレームが来た」というくらい良い肥料だそうです。
水が豊富な地域では、小水力発電が行われています。
小水力発電では、小型水車が用いられます。
京都市嵐山では、渡月橋にサイフォン式水車が設置され、産み出された電力は橋のライトアップなどに用いられます。
奈良県吉野村では、主に緊急電源のため小川や農業用水くらいの水量でも発電できる発電機を設置しています。
これらの小さな発電機は、ホームセンターで購入できる部品(自転車の発電機など)を用い、地域の住民が手作りで製作でき、そして修理することができます。
冬になると積雪がある地域では、停電による孤立化に備える必要があります。
住民が製作、修理ができる発電機であれば、緊急時でも集会所の電灯など最低限の電力を得ることができるメリットがあります。
「エネルギーの地産地消費」という言葉には、単に電力を自力でまかなうことだけを目的とするのではなく、発電を通して「町おこし」、「地域復興」を目指すということも含まれています。
実際、水車造りを通して住民が顔見知りになる、発電の残りカスを肥料として育った野菜を地域で消費する、エネルギー循環の仕組みを学校で子どもたちに伝える、という事例があります。
さらに、将来的には発電設備の運営や原料の調達のために雇用を生み出そうという自治体もあります。
いまは小さな取り組みですが、日本各地で発電を軸としたコミュニティーが広がり、「エネルギーの地産地消が当たり前」、「地域が職場」という社会が生まれることを期待します。