1. 集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その9
小笠原弁護士の“知っ得”

集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その9

 7月1日に閣議決定された「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(以下、7/1閣議決定と言います)の集団的自衛権に関する部分(3項の「憲法9条の下で許容される自衛の措置」の箇所)は、6月27日発表の閣議決定案とほとんど変わりませんし、閣議決定案は高村試案とほとんど変わりません(内容上の小さな違いは後述します)ので、高村試案に対するこれまでの説明は、そのまま7/1閣議決定にも当てはまります。

 つまり、7/1閣議決定も、高村試案と同じように、1972年政府見解との間に論理的整合性がない、基本的な論理の枠内にもない、論理的な帰結として導かれる関係にもない、ということです。

  しかし、安倍首相は、閣議決定後の記者会見の冒頭で、次のように言いました。

 「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはありません」

  また、北海道新聞の宇野氏からの質問に、次のように応答しました。

   「今回の新3要件も、今までの3要件と基本的な考え方はほとんど同じと言っていいと思います」

   「繰り返しになりますが、基本的な考え方はほとんど変わっていない、表現もほとんど変わっていないと言ってもいいと思います」

  えっ、何? 集団的自衛権の行使は許されないというこれまでの憲法解釈を、今回の閣議決定で変えたのでは? 

 基本的な考え方が変わったのでは?

            弁護士 小笠原 伸児