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高山弁護士のニュース時評


「代用監獄存続、衆院委で可決」−「刑事施設・受刑者処遇法改正案」衆議                  院法務委員会

                               −(4.15朝日朝刊)

「代用監獄」ってご存知ですか。

   代用監獄というのは警察の留置場を監獄(刑事施設)の代わりに使う、ということです。  現在、刑事裁判のために勾留された容疑者は、本来、法務省が管理している拘置所に収 容されるのですが(例えば、例のホリエモンさんは逮捕当初から拘置所に収容されました )、拘置所に代えて警察署の留置場に収容される例がほとんどです。  この代用監獄がなぜ問題になるのかと言いますと、多くのえん罪事件や無罪判決が出さ れた事件で、代用監獄が自白の強要やえん罪を生み出す原因になっていることが指摘され ているからです。家族や友人、知人と切り離されて警察署の留置場に閉じ込められて、四 六時中監視され、その道のプロの警察官に長時間取り調べを受ければ、自分の言い分をつ らぬくことはたいへん難しいのです。  経済の分野ではグローバルスタンダードが叫ばれて制度やシステムが変わってきていま すが、人権の分野にも国際的に承認された基準があります。容疑者として捜査対象にされ、 身体を拘束された人について言えば、速やかに裁判官の面前に出頭し、その後、捜査を担 当する警察の管理下においてはいけない、というのが、この分野での国際的な人権保障の 水準です。実際、日本の代用監獄とは同じような制度を活用している国はほとんどない、 と言われています。  悪いことをした人には人権を保障する必要はない、という意見もあります。しかし、悪 いことをしたかどうかは、法律が定める厳格な刑事裁判の手続によって認められて初めて 決まる(無罪の推定)というのも民主主義社会の刑事裁判の大原則です。  先の報道には、代用監獄に収容することを段階的に減らす方向での努力を求める付帯決 議が全会一致でついたとのことですが、本来、代用監獄は廃止されなければなりません。  今回の法改正で、代用監獄問題を決着させてしまうのではなく、拘置所を増設したり、 既存の留置場を法務省の管理に移すなどの方策が必要です。そして、当面の問題として、 争っている容疑者や重大な事件について容疑者とされている人は、代用監獄ではなく拘置 所に収容する、という取り扱いにする必要があります。                             弁護士 高 山 利 夫



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