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高山弁護士のニュース時評


『国民投票法案、「18歳以上」で調整 

   今国会成立なお困難』−11月10日付朝日朝刊−  現在、国会には憲法改正に必要な国民投票に関する法案(以下、国民投票法案といいま す)が提出され、憲法調査特別委員会でその審議が行われています。  この国民投票法案は、自民・公明の与党が提出した法案と民主党が提出した法案があり、 上記報道は、与党と民主党の法案の違いの1つである投票権者の範囲について、与党側が 「18歳以上」を受け入れる調整に入ったことを伝えるとともに、国民投票の対象につい て、憲法改正に限定する与党案と憲法改正を限定せず、国政の重要な課題についても実施 するという民主党案との間で開きがあり、今国会で成立するのは困難ではないかという見 通しを報じたものです。  しかし、この憲法改正国民投票法案は、そもそも今急いで制定する必要があるのでしょ うか。  安部首相は、就任の際の所信表明演説で5年を目途に憲法改正を行うと表明しましたが、 改正の具体的な内容は、自民党が昨年11月、「新憲法草案」を提出した以外、公明党も 民主党も具体的な内容を決めていません。他方、社民党と共産党は改正に反対の立場を表 明しています。憲法改正の方向性について、自民党を除いて、まだ、議論が定まっていな いにもかかわらず、憲法改正のための手続法を今制定する必要はないと言えます。  この間、毎年5月前後に、憲法改正に関する世論調査の結果が各マスコミから発表され ています。この世論調査は、何となく憲法は改正した方がよい、或いは、改正してもやむ をえないという雰囲気を高める効果をもってきたと思いますが、調査の設問の仕方やその 評価の仕方には少し問題があることを前提としても、まだ、国民の中では憲法改正の目的 や具体的な内容について、一定の方向性があらわれているとは言えません。  まして、憲法の基本原理である国民主権・平和主義・基本的人権尊重について改正しよ うというのであれば、法律改正の必要性について、いっそう慎重であるべきであり、その ための国民投票法案を急ぐ必要はないというべきでしょう。                             弁護士 高 山 利 夫



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