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「 尼崎市で偽装請負」
−2月20日付読売新聞−
上記報道は、兵庫県尼崎市が、2月19日、請負契約で人材派遣会社に発注していた住
民票データの入力業務について、労働者派遣法などに違反する「偽装請負」にあたる可能
性が高いとして、今年4月から派遣契約に切り替えることを決めた、と報じています。
昨年11月には、同じ兵庫県の篠山市で「偽装請負」が行われ、兵庫労働局が是正指導
をしたこととが報道されましたが、最近でも京都市立病院で偽装請負が行われていたこと
が報道されています。
労働者派遣と請負の区別については、既に昭和61年から当時の労働省が基準を定めて
います(昭和61年4月7日労働省告示第37号)。その基準の内、業務の遂行に関する
指示その他の管理を自ら行うことが請負の基本です。篠山市の例も尼崎市の例も、市職員
が請負契約先の社員への指導や指示をしていたと報じられています。
そもそも、法令を遵守することは国や地方自治体の最も基本的な責任ではないでしょう
か。法令や条例を制定して、国民や住民にその遵守を求める国や地方自治体が法律を守ら
ないというのでは法治主義はなりたちません。国や地方自治体が職員を採用する際、職員
から憲法や法令を遵守するという誓約書を取り付けるのも、法治主義を率先する公務員と
して国民、住民に奉仕することのあらわれのはずです。
しかも、「偽装請負」は、今や報道された地方自治体のみならず、国や地方自治体、民
間にまで広がっている疑いがあります。「偽装請負」で労働関係上の使用者の責任をまぬ
がれ、しかも、低い賃金で、期間も短いという不安定な雇用関係を国も地方自治体も民間
も問わず広げているのではないのでしょうか。格差社会を国や地方自体みずから作り出し
ていることを考え直してはどうでしょうか。
弁護士 高 山 利 夫

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