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鹿児島公選法違反、12人全員無罪確定へ
地検控訴断念固める−夕刊読売新聞、3月6日付
2003年4月に行われた鹿児島県議選をめぐる公職選挙法違反事件(買収、被買収)
について、2月23日、鹿児島地方裁判所は、被告人とされた12名全員に無罪を言い渡
しました。上記記事は、この鹿児島地裁判決に対し、同地方検察庁が控訴を断念する方針
を固めたことを報道したものです。
鹿児島地裁は、「強圧的、誘導的な取り調べで自白が引き出された可能性がある」とし
て、被告人等の自白調書の信用性を否定し、買収の会合は存在しなかったと判断していま
した。
この事件は、無罪判決が大きく取り上げられ、「踏み字」という方法で自白を強要した
取り調べの実態が報道されました。
このような報道に接するたびに、そして私がかかわった事件を通じても感じることは、
取り調べにおける自白強要がやはり後を絶たないということです。3月3日付読売新聞朝
刊の社会面では、2005年5月、アパートが燃えて人が死亡した火災で現住建造物放火
罪に問われた被告人の論告求刑公判において、大阪地裁が自白調書の証拠請求を却下した
ことを踏まえ、検察側が「(大阪府警の)取り調べに問題があったことは否定できず、非
難は甘んじて受けなければならない」と異例の説明をした上で、求刑(18年)をしたこ
とが報じられています。
自白の強要は、憲法や刑事訴訟法で保障された黙秘権を侵害し、その人の人格、名誉を
傷つけ、時としては無実の人をえん罪におとしいれます。
こうしたことが繰り返されないようにするには、取り調べる側の法令遵守のみならず、
取り調べの過程自体をもっと透明にする必要があるように思います。弁護士会が求めてい
る取り調べの録音や録画を取り入れてはどうでしょうか。
それにしても、鹿児島の公選法違反事件では、自白調書の信用性は否定したものの、証
拠採用をした裁判所のあり方について疑問がある外、証拠上その存在自体否定された買収
会合を作り上げてしまった捜査関係者(検察官も含みます)に何のお咎めもないというの
は疑問に思います。
弁護士 高 山 利 夫

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