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「全国民が調査対象」、自衛隊情報収集で防衛相
−毎日新聞6月20日付朝刊−
自衛隊が防衛省になると、その最高責任者は、こうも恐ろしい答弁ができるのでしょう
か。
上の記事では、久間防衛相は、19日の参議院外交防衛委員会で、民主党の白真勲、増
子輝彦両議員の質問に答えて、「自衛隊の行動、組織、保全に関することなら、あらうゆ
る団体を調査しても違法ではない」、「国会議員であっても、情報収集の対象になりう
る」などと答弁したことが報じられています。 先週来、陸上自衛隊情報保全隊が自衛隊
のイラク派遣に反対する市民団体を含む多数の市民、団体、ジャーナリスト、国会議員な
どの情報を秘密のうちに収集していたことが報道されていますが、上記記事の久間防衛相
の答弁は、法的にも全く問題が無いと述べているようです。
しかし、自衛隊法には、久間防衛相が答弁したような情報収集ができることを定めた規
定はないように思われます。
自衛隊法が、国民を対象にした情報収集できる場合として規定しているのは治安出動命
令が予測される場合の自衛隊法79条の2と自衛官が司法警察員として捜査を行うことが
できる場合の同法96条だけのように思われます。
79条の規定は、治安出動(間接侵略その他緊急事態に際して、一般の警察力をもって
は、治安を維持することができないと認められる場合)が予測される場合の情報収集で、
自衛隊が国民に銃を向けることを認める点で重大な問題を含んでいますが、その要件は厳
格に定められています。今回、陸上自衛隊情報保全隊が行っていた行為は、その要件にあ
てはまりません。
また、96条は、犯罪行為の捜査ですから、もちろん、今回の自衛隊による情報収集を
正当化することはできません。
自衛隊は、国内でもっとも大きく強い実力部隊です。そして、現在、自衛隊のイラク派
兵については、世論調査によっても半数以上の国民が消極的意見です。まして、自衛隊の
イラク派兵問題について、誰がどのような考えを持ち、どのような言論、表現をするかは、
憲法に保障されている自由な事柄のはずです。
また、軍事について重要なことは、議会ひいては国民によるコントロール、シビリアン
コントロールだと思います。久間防衛相の答弁は、逆に、自衛隊が国民も国会議員も誰か
まわず監視できるというもので、考え方が逆なのではないでしょうか。
弁護士 高 山 利 夫

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