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高山弁護士のニュース時評


富山冤罪再審「柳原さん無罪確定」

      −地裁支部判決「捜査批判なし」−10月11日付毎日新聞朝刊−  富山県警に強姦などの容疑で逮捕され、富山地裁高岡支部で懲役3年の実刑判決を受け、 服役して出所後、真犯人が現れた事件の再審の判決が10月10日にあり、上記の報道の 外多くのマスコミから報道されました。  この間、この事件については、物的証拠の軽視と警察による自白の強要という捜査のあ り方や、再審公判の裁判所の証拠採否のあり方について、報道がなされていました。また、 最高検察庁は、8日、この事件の問題点や再発防止策を報告書にまとめ、日弁連も今後、 国選弁護のあり方などについて独自の調査をすると伝えられています。冤罪事件などの死 刑再審事件当時から指摘されてきた捜査のあり方(代用監獄での自白強要など)や証拠評 価の問題点が今も解決されていないことに落胆を覚えます。  ところで、再審で無罪が確定した被害者の柳原さんは、「納得いかない」と憮然とした 表情を浮かべたと報道されています。柳原さんは、毎日新聞のインタビューに対し、「失 った5年半という時間のとてつもない長さを痛感しています」、「心に受けた傷は少しも 消えていません。『はい』としか言うなという取調官の怒鳴り声が、今も夢に出てきま す」、「裁判員制度も始まります。これを読んでいる人も、明日には覚えのない容疑で逮 捕され有罪にされかねないほど、警察や司法というのは強力で恐いものなのです」と述べ ています。  上記記事には、富山地検次席検事と富山県警察本部長の「お詫び」の談話が掲載され、 柳原さんが有罪判決を受けた際、国選弁護人を務めた弁護士も「申し訳ない」と述べたこ とが報道されています。  これに対し、再審で無罪を言い渡した藤田敏裁判長は、判決の言い渡しの後、「無実で あるのに服役し誠にお気の毒に思う」などと述べたそうです。上記記事は、この裁判長の 付言(付け足し)について、「人ごとのよう」、「心に響かない」と評しています。  冤罪は司法による犯罪です。世間の常識では、加害者は被害者に対し、「お気の毒で す」とは言わないものです。冤罪は裁判所(官)を含む司法の責任であることを考えさせ る「付言」です。 弁護士 高 山 利 夫



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