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元旦各紙の社説から
「歴史を刻む総選挙の年に 平成20年の意味」(1月1日付朝日新聞社説)、「新しい
年を迎えて つながり支え合う社会に」(同京都新聞社説)、「責任感を取り戻そうまず
政治から「公」の回復を」(同毎日新聞社説)、「多極化世界への変動に備えよ外交力に
必要な国内体制の再構等」(同読売新聞社説)
元旦の各紙の社説の見出しをあげました。高齢化社会と地域におけるつながり、支え合
いを提唱する京都新聞以外の全国紙の社説は、いずれも国内政治、国際政治のあり方を論
じるものでした。参議院の与野党の議席の逆転、安倍首相から福田首相への交代劇、いわ
ゆる新給油法をめぐる動向と国際貢献のあり方など、重要なテーマに連なるものです。
「朝日」の社説は、年金問題、少子高齢化問題、ワーキングプアの増加などを指摘して
、「日本は沈みつつある船ではないか」と日本社会に対する危機感を表明し、その上で、
最も切実なのは政治の混迷であるとして、「ねじれ国会」でますます迷路をさまようのか、
出口を見つけるのか、今年が大きな分岐点になると論じています。私見では、現在の「混
迷」の大半は、いわゆる構造改革と市場優先の改革によるものですが、この点への言及は
ありません。また、衆議院と参議院の議席状況が異なりうることは、既に憲法が想定して
いることで、とりたてて異常なことでもないように
「毎日」の社説は、冒頭に有名な寺山修司の短歌を引用し、日本と世界の混迷の共通項
として「責任」の欠如、「公」の感覚の喪失を指摘し、責任感、とりわけ政治における
「公」の回復を論じています。50年前も現在も、「身捨つるほどの祖国はありや」とう
たった心情は同じではないでしょうか。責任感を取り戻そうと唱える「毎日」もメディア
としての責任感をもって報道してもらいたいところです。 これに対し、「読売」の社説
は、当面する政策課題に関する提言という印象です。日米同盟基軸は不変、財政危機と消
費税率引き上げ、衆議院の3分の2の再議決は憲法上のルールなど、その主張は、何か政
党の政策提言のようです。報道機関として「読売」は他と違う性格付けを自らに課してい
るのかしら、と思う程です。
弁護士 高 山 利 夫

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