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「同房者通じ不当捜査」殺人・放火無罪判決−福岡地裁支部
−3月5日付読売新聞夕刊−
上記報道は、2004年3月、北九州八幡西区で発生した殺人、非現住建造物等放火事
件について、3月5日、福岡地裁小倉支部が、被告人の女性に無罪判決を言い渡したこと
を報じています。無罪判決の理由として、上記報道は、「捜査機関は、被告人の収容先の
留置場に別事件の被疑者を意図的に同房にして、被告人の供述を得ようとするなど、虚偽
供述を誘発されかねない不当な捜査を行った。被告人の犯行告白は信用できず、犯人と認
定することはできない」と判断したと報じています。
そして、報じられた判決骨子をみると、@被告人の供述は任意になされたものとは言え
ず、証拠能力がない、A被告人の供述(被害者の首の傷に関して)は、その内容に犯行告
白の秘密の暴露があるとはいえず、信用性もない、Bその他の状況を総合しても被告人を
犯人と断ずる心証は形成できない、と認定したとのことです。
この事件は、法務省が管轄する拘置所に収容すべき被告人を警察の留置場に収容するこ
とを認める代用監獄(代用刑事施設)制度が、いぜん捜査機関が容疑者にウソの自白を迫
る装置となっていることを示しています。また、警察の留置場での同房者を利用した情報
の入手という捜査方法が、えん罪を生みかねない方法だということを明らかにしているよ
うに思います。本来、捜査は、容疑者の留置を利用して自白を迫ってはならないはずです。
上記報道の解説記事が指摘しているとおり、裁判員制度の実施を前にして、従来以上に
捜査の適正が求められます。
弁護士 高 山 利 夫

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