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「代用監獄制度 必要性もある−橋下知事−」
−3月24日付朝日夕刊
弁護士出身の大阪府の橋下知事が、3月24日開かれた大阪府議会の警察常任委員会で、
警察の留置場を本来の収容施設である拘置所の代わりに使う代用監獄制度について、「治
安維持などの点から考えると、実務上の必要性もある」、「単なる(拘置所)の収容能力
の問題に限らない。事案の真相解明という観点からも考慮する必要がある」と述べた、と
上記記事は伝えています。
どうやら橋下知事は、弁護士をしていた当時、本格的に争う刑事事件を担当した経験や
日弁連の人権擁護大会の宣言なども目を通したことがないようです。弁護士出身というこ
とですので、橋下知事の人権問題に対するアプローチや人権行政に対する姿勢を注目して
いましたが、どうやら期待はずれのようです。
代用監獄制度の弊害は、日弁連がつとに自白強制とえん罪の温床になっていることを指
摘し、将来的には廃止し、勾留された被疑者については、本来の収容施設である拘置所を
増設して収容すべきであると主張してきたことは周知のことがらです。最近でも、鹿児島
の選挙違反事件や富山の強姦事件でのえん罪事件で、代用監獄における自白強要が問題に
なったばかりです。
そもそも、裁判所が発する勾留状に基づいて行われる被疑者の勾留は、罪証隠滅と逃亡
の防止という目的のために行われるもので、橋下知事が述べるような治安維持の目的で行
われるものではありません。同じく、事案の真相解明という点も、捜査機関による取り調
べについて、捜査当局がその必要性と権限の根拠として主張していますが、代用監獄制度
を真相解明のための取調べのために利用することは捜査当局も正面からは肯定しないはず
です。
府知事という地方行政のトップの方には、人権問題での発言については、議論の経過や
焦点をよく踏まえていただきたいと思います。テレビタレントののりで軽々しく発言すべ
きではないと思います。
弁護士 高 山 利 夫

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