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高山弁護士のニュース時評


裁判員開始まで半年、幹部検事から事務官まで「全員が広報官」               出張説明会、1年半で1100件

  −11.21付毎日新聞夕刊 −  国民が刑事裁判に参加し、職業裁判官と一緒に審理し、評議に加わり、 判決を決める裁判員制度が施行(来年5月21日施行)されるまで半年 を切りました。  上記報道は、大阪地方検察庁の検事や事務官が昨年4月頃から各種団 体や企業に出向いて行っている「出張説明会」が大盛況で、約1年半の 間に1100件を超え、出席者からの質問も「実施が近づき(質問が) どんどん具体的になっている」という検事の言葉を伝えています。  また、大阪地検の説明会を行った民間企業が、裁判員に選ばれた社員 に特別休暇を与えて有給休暇と同じ扱いにすることを決めたことも報道 されています。  説明会に参加した社員の方は、「裁判員に選ばれたら長期間、仕事が できなくなると思っていたが、2〜3日で終わるケースが多いと聞いて 安心した」と話していた、そうです。 このような説明会は全国各地で行われているはずですが、参加した国 民の率直な声はあまり報道されていないように思います。再度実施を半 年後に控え、もっと大規模に、上記のような説明会が行われる必要があ ります。 これまで司法の分野では、民事や家事の調停委員制度や検察審査委会 を除いて、司法の過程そのものに広く国民が参加する制度はありません でした。01年6月、司法制度審議会の「最終報告」が、刑事裁判につ いて、一般国民が職業裁判官ともに有罪、無罪の決定と刑の重さ、大き さを決定する裁判員制度の導入を提起したことは、画期的なことでした。  当時、日弁連は、アメリカやイギリスで実地されている陪審員の導入 を提唱していましたが、最高裁も最高検も、一般国民が職業裁判官と一 体となって審理と判決に関与することには消極的だったのです。 国民主権と民主主義の制度が現行憲法に基づいて60年余り実地され ている今日、政府や国会からの独立が保障されるべき司法の分野でも、 国民から乖離したままでいることはできない、ということです。そして、 その乖離を埋める方法としては、広報や啓蒙では、まったく足りず、司 法作用そのものに国民が直接参加することが最も直接的であり、効果も 期待できると考えられたのでしょう。 このように裁判員制度は、国民主権や民主主義の理念に基づく制度で あると考えられます。 しかし、マスコミで報じられる世論の状況は、はじめて導入される司 法への国民参加の制度ということもあいまって、国民の中に消極的意見 が根強く残っているようです。しかも、国民参加の制度が、刑事裁判に ついて導入されることの目的や意義について、この間の刑事裁判制度の 重大な問題点を含めて、伝えられていないように思われます。 引き続きこの欄で刑事裁判に裁判員制度が導入される目的や意義を考 えてみたいと思います。                    弁護士 高 山 利 夫



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