- ホーム >
裁判員制度を考える@
国民が刑事裁判に参加し、職業裁判官とともに、被告人とされた人が有罪かど
うか、有罪の場合、どのような刑にするのかを決める制度(裁判員制度)が来年
5月21日から実施されます。11月末から12月初めにかけて、裁判員の候補
者の名簿に記載された人に、裁判所から通知が送られたことが報道されました。
来年行われる裁判員裁判の裁判員は、事件ごとに一定の手続を経て、この中から
選ばれます。
裁判所、検察庁、弁護士会は、現在、この制度の宣伝と準備をしている最中で
す。また、この制度については、さまざまな意見が表明されています。
そこで、この欄でも裁判員制度について考えてみたいと思います。
まず、裁判員制度が導入された目的、趣旨です。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下、裁判員法といいます)は、こ
の制度の趣旨について、「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資
することにかんがみ」と規定しています。国民が直接、主体的に刑事裁判に参加
すれば、司法に対する理解と信頼が増すだろう、という考え方です。
しかし、国民の司法に対する理解と信頼が向上するのは、国民の常識にかなっ
た適正な裁判が行われていることが広く知られれば十分であり、国民に制裁(過
料)まで科して強制的に参加してもらう必要まではないはずです。
この制度の導入を提起した司法制度改革審議会の「最終意見」は、この制度の
目的について、「一般の国民が、裁判の過程に参加し、裁判内容に国民の健全な
常識がより反映されるようになることによって、国民の司法に対する理解、信頼
が深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになる」と述べ
ています。つまり、この制度の目的は、「裁判内容に国民の健全な常識がより反
映されるように」することにあります。そして、実際、これまでの職業裁判官に
よる刑事裁判では、国民の常識からややもすればかけ離れた判断がえん罪や誤判
を生んできたのです。
本来、刑事裁判は、憲法や刑事訴訟法に基づいて、誤りなく罪と罰を決めるも
のです。ところが実際には、いったん死刑判決を受けた人が再審で無罪となった
り、捜査の段階で自白を強要されてえん罪に苦しむ人が少なくありませんでした。
裁判員制度は、このようなえん罪を生むことがないよう国民の常識を刑事裁判
に直接反映させるために導入されたと考えるべきです。
弁護士 高 山 利 夫

<トップページヘ>