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裁判員制度を考えるA
前回、裁判員制度の目的について、国民が直接参加することによって、国民の
常識を裁判内容に反映させ、えん罪を生まない、よりよい刑事裁判制度をめざす
ための制度と考えられると述べました。
今回は、裁判員制度と民主主義との関係についてふれたいと思います。
いわゆる先進国と言われる多くの国で、裁判過程に国民が直接参加する制度を
採用しています。アメリカ、イギリス、カナダ、ロシアは陪審制度を、ドイツ、
フランス、イタリアなどは参審制度を採用しています。お隣の韓国でも2008
年から陪審制度をスタートさせました(日本でも戦前に15年にわたって陪審制
度を採用していました)。
陪審制度は、事件ごとに選ばれた市民が有罪、無罪を決める(刑の決定は裁判
官が行います)制度です。一方、参審制度は、国民が裁判官とともに審理し、有
罪、無罪の判断と刑を決める制度です。
裁判員制度は、事件ごとに裁判員が選ばれる点で陪審制度と同じですが、裁判
員が裁判官とともに有罪、無罪と刑を決める点で基本的には参審制度と言えます。
このように、国民主権や民主主義を政治制度の基本としている国では、その多
くが市民参加、国民参加の司法制度を採用しています。国民主権と民主主義を掲
げる日本国憲法の下では、職業裁判官のみが裁判を担当する制度よりは、国民が
直接参加する方式のほうがむしろふさわしいと言えます。
司法は、国会や内閣からの独立が憲法上要請され、政治的多数派から少数派の
権利を擁護するという重要な役割(例えば、国会の多数派が決めた自由、権利を
制約する法律を違憲と判断することなど)をもっています。
しかし、その司法も国民参加なくして、国民主権と民主主義の要請に応えるこ
とはできない、ということが裁判員制度を生み出す大きな背景です。その意味で、
裁判員制度は、現在の国民主権や民主主義が求める制度といえます。
弁護士 高 山 利 夫

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