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裁判員制度を考えるD
5月21日から裁判員制度がはじまりました。
一般の国民が刑事裁判手続に直接、権限をもって参加する制度がはじ
まることで、従来の刑事裁判が大きく変わる、改善されることが期待さ
れます。
日弁連などがこれまでの刑事裁判は変わらなければならないと考える
一つが「人質司法」と呼ばれる実態です。
「人質司法」というのは最長23日間に及ぶ起訴前の身体の拘束に加
え、起訴後も、被告人とされた人が保釈を請求しても、起訴された事実
を争っている場合、検察官は保釈に反対し、裁判所も「罪証隠滅のおそ
れがある」などと判断し、保釈を認めない、その結果、不本意ながら起
訴事実を認めざるを得ない事態が生じているという批判です。
これまでは、被告人とされた人が起訴事実を争うと、検察官の立証が
終了しないと裁判所は保釈を認めない運用をしてきました。弁護人がい
くら事案に即して証拠隠滅などできない、あり得ないと説明しても、聞
く耳を持たない、という感じです。
実際、1970年代に57%程度であった保釈率は、年々下がり続け、
2003年には12%にまでなりました。
しかし、裁判員制度の下では、連日の集中した審理が予定されていま
す。たとえ重大な事件であっても、被告人にされた人と弁護人が十分打
ち合せをして臨まなければ、防御権をまっとうできず、十分な審理が行
えません。拘置所等での夜間の接見も必要です。裁判員制度の開始は、
当然、保釈制度の見直しを迫ることになるはずです。
そして、裁判員対象事件以外の事件についても、その見直しが及ぶ必
要があります。
起訴された事実を争っている被告人とされた人が社会、家族、友人か
ら切り離され、捜査機関の下に長期間留め置かれることの苦痛と困難に
ついて、裁判所がもっと常識的な考慮を払うようになればと思います。
弁護士 高 山 利 夫

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