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高山弁護士のニュース時評

 

裁判員制度を考えるG

5月21日に制度がスタートした裁判員制度。8月上旬頃から裁判員 が参加した公判(審理)がはじまるようです。 ところで、裁判員法は、実施後3年を経過した時点で、制度の見直し (改善)を規定していますが、制度のスタート前から改善を求められて いた問題点があります。 その1つが、裁判員、元裁判員の守秘義務の問題です。  守秘義務の対象は、評議の秘密(評議の経過、裁判官、裁判員の意見、 その多少の数)と職務上知り得た秘密とされています。現に審理に参加 している裁判員の守秘義務はやむを得ないとしても、裁判員であった人 に一生涯の守秘義務を罰則付きで課すというのは行きすぎではないでし ょうか。裁判員であった人は、判決の事実認定や量刑の当否についても 一切話してはならないとされています。  司法に国民が直接参加する方式を採用している国々の国民の守秘義務 のあり方は一様ではありません。アメリカの陪審制度では、守秘義務は ないようですし、同じく陪審制を採用しているイギリスでは元陪審員の 守秘義務を定めています。お隣りの韓国では、国民参与裁判制度という 一種の陪審を採用していますが、元参与員の守秘義務は、研究協力の場 合には解除されているようです。 裁判員であった人に一律に厳しい守秘義務を課さなければ裁判の信頼 性や評議における自由な意見交換を確保できないわけではなさそうです。 そうでなければ、アメリカの陪審制度が元陪審員に守秘義務を課してい ないことが説明できないでしょう。 しかも、元裁判官には守秘義務違反の制裁はありません。元裁判官は 信用できるが、一般国民は信用できないというのでしょうか。 また、元裁判員に守秘義務を厳しく課しながら、制度の検証ができる でしょうか。検証ができなければ法が定める見直しが絵にかいた餅にな らないでしょうか。 守秘義務のあり方については、見直しが必要です。                     弁護士 高 山 利 夫



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