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高山弁護士のニュース時評

 

裁判員制度を考えるH

8月3日から6日にかけて、くじで選ばれた一般国民が刑事裁判に参 加する裁判員裁判のはじめての公判が東京地裁で行われました。テレビ、 新聞などで大きく報道されましたので、注目された方も多いのではない でしょうか。 新聞報道によると、事件は、東京都内で今年5月女性を刺殺したとし て72歳の男性が殺人罪で起訴されたものです。 6月に公判前整理手続が行われ、争点と証拠の整理が行われ、被告・ 弁護側は、起訴事実を認め、刑の重さが争点となったようです。 法廷では、殺意の強さと被害者側の言動が犯行を誘発したかどうかが 争われていたように思います。判決は、検察側の懲役16年の求刑に対 し、懲役15年でした。 判決の結果をみると、この事件では検察側の主張立証がほぼ認められ たとみることができます。 しかし、弁護人からみると、犯行のきっかけや殺意の強さについての 判決の認定と結論には納得できないはずです。 その後の報道をみると、被告人(弁護人)は控訴したようです。東京 高裁が裁判員が参加した制度のもとで認定した事実と量刑について、ど んな言及をするのか、注目されます。 また、事件発生から裁判までの流れをみると事件発生から3ヶ月ぐら いで重い懲役刑を言い渡されたことになります。しかも、4日間の連続 公判です。弁護側の準備は十分保障されたのでしょうか。気になるとこ ろです。 さらに、審理では被害者参加制度のもとで被害者の遺族、代理人弁護 士が参加しました。裁判員が刑の重さを決める上でどのような影響があ ったかについても今後検討される必要があります。 判決後、元裁判員が記者会見に応じていました。記者会見が行われ、 元裁判員が感想を述べた点は重要なことです。今後、各地で裁判員裁判 が行われていくと思われますが、裁判員が判決言渡後、記者会見をする ことは、その貴重な体験を広く共有したり、今後の制度の改善のために 大事なことです。 その後、2番目の裁判員裁判が行われたさいたま地裁の元裁判員の記 者会見では、裁判所職員が記者の質問に応じないよう指導していたこと が、報じられましたが、守秘義務の内容とその是非について考えさせら れました。 今後とも各地で行われる裁判員裁判の様子がひろく報道されることが、 刑事裁判のあり方や裁判員裁判がよりよい方向に改善されることにつな がると思います。                     弁護士 高 山 利 夫



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