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高山弁護士のニュース時評

 

裁判員制度を考えるK〜裁判員裁判体験記3

はじめての裁判員裁判 刑事事件の弁護人の役割は、起訴された人の権利と正当な利益を守る ことです。そのためには、起訴されている人の立場から事件に光をあて、 それを裁判所に適切に伝えることが必要です。 裁判員の参加する法廷では、裁判員が審理を見て、聞いて、その場で わかるようにしなければなりません。見て、聞いてわかる審理へ、とい う言葉が裁判員裁判の審理のあり方として強調されますが、このことは、 弁護の方針を検討する上でも重要ですし、証拠についても、供述調書 (警察官、検察官が関係者から聞いて書面にしたもの)をなるべく少な くして、証人に法廷で証言してもらうことを心掛ける必要があります。  法廷で使う用語についても、従来、裁判官、検察官と弁護士が暗黙の うちに共有していた法律用語を使用しないで、日常用語を使う必要があ ります。  この事件では、弁護人としてこれらの事柄について特に心掛けたつも りです。 こうしてみると、裁判員裁判は、これまでの刑事裁判のあり方を変え る契機になることがわかります。市民が裁判所に入ることによって、そ の市民がわかりやすくなるばかりではなく、それを傍聴している市民も 報道で知る市民も理解しやすくなります。 司法はまぎれもなく国家の権力作用です。その権力の行使の過程に市 民が参加することは、裁判所のあり方を変える契機となると思います。 裁判所、裁判官の説明責任が求められ、裁判所とその手続の透明化もす すむのではないでしょうか。  この点も私が裁判員裁判に期待する理由の一つです。                     弁護士 高 山 利 夫



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